これまで人間の骨と免疫は別々の組織として研究が進められていたが、近年、関節リウマチをはじめとして、様々な病気で免疫の異常と骨の異常が関わりあっていることや、骨と免疫に共通して作用する分子が病気を媒介していることなどが明らかになりつつある。そこで提唱された「骨免疫学」の第一線で研究に取り組むのが、東京大学大学院医学系研究科免疫学の高柳 広教授だ。今回は骨免疫学の可能性から、「骨を中心とした制御システム」を見つけるための研究の概要についてお話を伺った。 常に代謝を繰り返す「骨」の特性を研究 Q: … [もっと読む...] about 骨を中心とした制御システムを研究し、骨の真の役割を解明する~高柳 広・東京大学大学院医学系研究科免疫学教授
Bio/Life Science
レム睡眠を独自の技術でコントロールし、睡眠の機能を解明する~林 悠・筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 准教授
人間の睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠に大きく分けられ、一晩の間でその2種類が何度も切り替わっている。ノンレム睡眠についてはある程度解明が進んでいるのに対し、レム睡眠についてはほとんど何もわかっていないのが現状である。「レム睡眠は何のためにあるのか」を解明すべく、独自の研究手法を確立しているのが、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の林 悠准教授だ。林実験室は、脳の中にあるレム睡眠とノンレム睡眠を切り替えている脳部位を見つけ出し、そこを遺伝子操作の技術を使って操作する方法を採ることで、レム睡眠固有の機能解明をめざしている。今回は睡眠研究の大枠と、遺伝子操作を使ったレム睡眠研究の技術、社会課題への応用の可能性について伺った。 レム睡眠から、睡眠を解明する Q:研究の概要をお聞かせください。 睡眠研究のアプローチは、大きく3つに分けられます。1つ目が、睡 … [もっと読む...] about レム睡眠を独自の技術でコントロールし、睡眠の機能を解明する~林 悠・筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 准教授
化石燃料を使わず、次世代型アンモニア合成法を実現する〜西林仁昭・東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 教授
現在、人類は窒素肥料で育てられた植物、若しくは植物を食べた動物を食料源としている。それら窒素肥料して使われているのがアンモニアである。この状況を考えると、アンモニアは間接的に人類のエネルギー源となっているといえる。さて、こうしたアンモニアの人工生成を行なう生産方法はハーバー・ボッシュ法と呼ばれるものであるが、これは約100年前に開発された手法で、化石燃料の使用と二酸化炭素の排出から問題視されている。 こうしたなか、化石燃料も水素ガスも使わず、窒素ガスからアンモニアを合成することをめざしているのが、東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻の西林仁昭教授だ。「エネルギーキャリアとしてのアンモニアの有用性を示す」べく、新しいアンモニア合成法を開発する西林教授に、アンモニアの可能性について伺った。 現代人は、アンモニア生産に依存している Q: … [もっと読む...] about 化石燃料を使わず、次世代型アンモニア合成法を実現する〜西林仁昭・東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 教授
AMPA受容体からシナプスを研究し、神経の病気を解明する〜高橋 琢哉・横浜市立大学大学院医学研究科教授
鬱や統合失調症といった精神神経疾患は、その病気のメカニズムや要因がまだはっきりと特定できていない。原因を特定するためには、シナプスで何が起こっているのかを明らかにする必要がある。そのシナプス伝達を調べるのにキーワードとなるのが「AMPA受容体」だ。これはシナプスの伝達物質であるグルタミン酸の受容体のひとつで、神経機能において中心的な役割を果たすものであるが、このAMPA受容体を可視化することで、AMPA受容体の役割が変化した場合にどんな変化が起こるかを明らかにすることができる。そこで、AMPA受容体を標識できるPETプローブの開発を行なっているのが、横浜市立大学大学院医学研究科の高橋琢哉教授だ。基礎研究を元にして、臨床やリハビリテーション効果促進薬の開発までを見据える高橋教授に、AMPA受容体やPETプローブの概要について伺った。 シナプス研究 … [もっと読む...] about AMPA受容体からシナプスを研究し、神経の病気を解明する〜高橋 琢哉・横浜市立大学大学院医学研究科教授
バイオベースを実現するために、AIとITを活用する〜近藤 昭彦・神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科長
地球温暖化の原因とされる化石燃料の使用が年々制限されるなか、欧米を中心に注目が高まっているのがバイオプロダクションだ。バイオプロダクションとは燃料に限らず、生活で必要なあらゆるものをバイオ由来のものにすることを目指す大きな潮流であるが、この流れのなか「将来、バイオベース以外のものが禁止される時代が来るかもしれない」と予想するのが、神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科の近藤 昭彦 … [もっと読む...] about バイオベースを実現するために、AIとITを活用する〜近藤 昭彦・神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科長
視覚障がいの社会課題に、基礎研究と実践の両面から取り組む〜髙橋政代・理化学研究所プロジェクトリーダー
近年注目が高まっている再生医療において、臨床への応用が特に期待されているものの一つが網膜再生だ。ラボヘッドとして、網膜色素上皮細胞移植、次の再生医療である視細胞移植、そして基礎研究という3つのチームを束ねているのが、髙橋政代・理化学研究所プロジェクトリーダーだ。自身を「研究者でなく社会活動家」だと紹介するように、現在はプロジェクトリーダーにとどまらず、病院の非常勤医師、公益法人理事、そしてソーシャルベンチャー立ち上げなど多岐にわたる分野で活躍している髙橋氏に、これからの再生医療、網膜治療の向かうべき方向性について伺った。 研究・臨床・社会実験の3チームを統括 Q:研究の概要についてお話しください。 研究内容をお話しする前に、iPS細胞を初めて人間に利用して手術を行なったことは、様々なメディアで取り上げていただいていますが、あくまでもこれは我々が … [もっと読む...] about 視覚障がいの社会課題に、基礎研究と実践の両面から取り組む〜髙橋政代・理化学研究所プロジェクトリーダー
疫学データの解析で、感染症予防にマクロ視点から取り組む〜西浦博・北海道大学教授
海外で疫病が発生し、空港で入国制限がなされた、などのニュースは頻繁に目にするが、じつは一口に感染症といってもその流行地域、時期にはさまざまな違いがある。世界中のさまざまな感染症に対し、数理モデルを利用した流行データの分析手法をとっているのが、北海道大学の西浦教授だ。「感染症は、シンプルに数式化できる」ことが研究の道を決めるきっかけになったという西浦教授に、感染症に対する現時点でのベストなアプローチを伺った。 感染の仕組みを数式で記述する Q:「理論疫学」という言葉について、研究概要をお聞かせください。 感染症の理論疫学というのは、感染症が流行してヒトや動物に感染したときに、どれくらいの期間が経ってどのようなメカニズムで発症し、また重症化するのか、あるいは、ヒトが感染してから二次感染するまでにどのくらいの時間を要するのかといった感染の仕組みや、感 … [もっと読む...] about 疫学データの解析で、感染症予防にマクロ視点から取り組む〜西浦博・北海道大学教授
脳の血液関門の研究で、薬のあり方を根本から変える〜寺崎哲也・東北大学教授
創薬治療のためには、人間の血管の性質についての研究が不可欠である。かつて脳の血管は壁のように隙間がない為に異物(薬)から脳を守っているものだとされていたが、実はそうではなく、汲み出す仕組みを持つポンプのようなものであるとわかったのは、つい25年前のことである。その発見をもとに、脳の血管の役割を明らかにし、「脳に最も効く薬のかたち」を追求するのが、東北大学の寺崎教授だ。今回は脳血管の基本的な役割についての説明から、創薬研究全体の展望について伺った。 血管の新たな働きの発見で、薬の作り方が変わった Q:研究の概要についてお聞かせください。 脳の血液関門の研究をしています。血液脳関門とは、血液が流れる血管のことです。なぜ血管なのかというと、脳の血管とそれ以外の血管とでは構造が違っていて、脳の血管はつなぎ目のない筒状の細胞、もしくはつなぎ目に隙間がない … [もっと読む...] about 脳の血液関門の研究で、薬のあり方を根本から変える〜寺崎哲也・東北大学教授
動物におけるリプログラミング現象の解明から、細胞初期化の要素を特定する〜宮本圭・近畿大学講師
ヒト・動物の発生過程においては、数千もの遺伝子が約一日以内に急激に転写され、正常な発生が進行する転写リプログラミングが起こっている。この転写リプログラミングがどのようにして生み出されるのかを解明すべく、次世代シークエンサー等を用いた最新の手法を伝統的な発生生物学の実験系に取り入れているのが、近畿大学の宮本圭講師だ。特定の遺伝子やタンパク質レベルで何が作用し初期化が誘導されているのか。この疑問を解明する、最先端の技術と方法論について伺った。 Q:研究の概要についてお聞かせください。 動物細胞のリプログラミングについて研究しています。リプログラミングは、日本語で言うと初期化を意味します。わかりやすく例えるなら、皆さんの使っているコンピューターにデータがたくさん詰まってしまったら、初期化をしますよね。動物細胞の初期化もこれと同じようなもので、考え方と … [もっと読む...] about 動物におけるリプログラミング現象の解明から、細胞初期化の要素を特定する〜宮本圭・近畿大学講師
個体群間の遺伝的つながりを形成し、サンゴの生態系を明らかにする〜中島祐一・沖縄科学技術大学院大学研究員
自然の乱開発によるサンゴの減少が社会問題となり、法規制は年々厳しさを増している。こうした中、サンゴの専門家として沖縄県の海岸をベースに研究を進めているのが、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の中島 … [もっと読む...] about 個体群間の遺伝的つながりを形成し、サンゴの生態系を明らかにする〜中島祐一・沖縄科学技術大学院大学研究員