持続的社会の実現に向けて、熱エネルギーの有効利用が求められている。ナノスケールで熱を操作し、「伝える」「蓄える」「変換する」などのさまざまな熱機能を革新させ、熱エネルギーを有効利用した新材料を開発しているのが、東京大学工学系研究科総合研究機構/機械工学専攻の塩見淳一郎教授である。今回は、熱の第一人者である塩見教授に、熱エネルギー利用における最先端事例について伺った。 フォノンエンジニアリングにマテリアルズ・インフォマティクスを組み合わせて新素材を開発 Q:研究の概要についてお聞かせください。 われわれはミクロの世界から熱伝導を紐解き、熱機能を革新させ、熱エネルギーを有効利用した新材料の開発を行っています。 熱工学は、いかにしてモノを効率よく温めたり、冷やしたり、その熱を蓄えたり、他のエネルギーに変換したりする研究分野で、従来 … [もっと読む...] about 分子からマルチスケールな視点で材料を開発して、熱エネルギーを有効利用する~塩見淳一郎・東京大学工学系研究科総合研究機構/機械工学専攻 教授
Nano Technology/Materials
光量子技術を用いて、次世代コンピュータとそのアプリケーションを開発する〜武田 俊太郎・東京大学 大学院工学系研究科物理工学専攻 准教授
世界各国が国家戦略として量子技術の開発を後押ししている昨今。GoogleやIBMなどの企業も含め、さまざまな方式による量子コンピュータの実用化に向けた開発が行われている。そんな中、独自な発想と技術を駆使して、プログラム可能なループ構造の光量子コンピュータを開発したのが、東京大学 大学院工学系研究科物理工学専攻の武田俊太郎准教授だ。どのような発想から本研究が生まれたのか。これから取り組もうと考えている研究テーマについても話を伺った。 複数ステップにわたる計算が可能な「光量子プロセッサ」を開発 Q:まずは、研究の概要について教えてください。 コンピュータの性能が上がれば産業は豊かになり、国家の安全保障においても大きなアドバンテージになります。年々進歩を遂げているコンピュータですが、実は、そろそろ、その進歩も頭打ちになると言わ … [もっと読む...] about 光量子技術を用いて、次世代コンピュータとそのアプリケーションを開発する〜武田 俊太郎・東京大学 大学院工学系研究科物理工学専攻 准教授
細胞サイズスケールの分子の挙動を解明する~柳澤 実穂・東京大学大学院 総合文化研究科 先進科学研究機構 准教授
タンパク質や高分子などの柔らか物質を対象に、物理的な研究を行うソフトマター物理では、マイクロリットル以上の体積量をもつ、目に見える溶液中での分子の振る舞いが、実験と理論の両面からひろく研究され、理論的な予測も可能になってきている。一方、分子よりは大きいが目では見えないくらい小さな細胞サイズ(数百ナノメーターから数十マイクロメーター)の系になると、溶液中とは異なる分子の振る舞いが現象として起こっていた。その謎を解明するために研究に取り組み、細胞サイズスケールの分子の特殊な振る舞いを発見したのが、東京大学大学院 総合文化研究科 先進科学研究機構の柳澤 … [もっと読む...] about 細胞サイズスケールの分子の挙動を解明する~柳澤 実穂・東京大学大学院 総合文化研究科 先進科学研究機構 准教授
オリジナルツールを開発して、脂質の自己組織化を解き明かす〜杉原加織・東京大学 生産技術研究所 講師
昨今、抗生物質が効かない耐性菌が世界的に流行り始めており、その治療薬として注目を浴びているのが「抗菌ペプチド」である。抗菌ペプチドは長年研究されてきたが、バクテリアの殺傷能力は極めて高いもののその分副作用も大きいことが課題であった。2020年、異種の「抗菌ペプチド」を混合することで、敵であるバクテリアに遭遇したときには攻撃機能を発揮し、ヒトの真核細胞に遭遇したときは毒性を中和するという、「ダブル・コオペラティブ効果」が報告された。この極めて珍しい現象を発見したのが、東京大学 … [もっと読む...] about オリジナルツールを開発して、脂質の自己組織化を解き明かす〜杉原加織・東京大学 生産技術研究所 講師
無機粒子の界面反応メカニズムを解明し、社会に還元する〜藤 正督・名古屋工業大学 先進セラミックス研究センター 教授
予測できない物性が現れやすい界面化学領域。こうした界面の特殊性を活用して、「無焼成セラミックス」や「中空粒子」の新技術を生み出し、これまでにない新たな材料の開発に取り組んでいるのが名古屋工業大学 先進セラミックス研究センターの藤 … [もっと読む...] about 無機粒子の界面反応メカニズムを解明し、社会に還元する〜藤 正督・名古屋工業大学 先進セラミックス研究センター 教授
高分子ガラス材料の機械特性向上のメカニズムを解き明かす〜信川 省吾・名古屋工業大学 工学専攻 生命・応用化学系プログラム 准教授
国内の大型プロジェクトをはじめ、国内外で多数の報告があり、多くの研究者が取り組んでいる「アクリルガラスの脆性改善」。しかし、特殊な合成や材料が求められるなど実用化には困難を極めている。そんな中、材料調製やコスト面の導入が容易にできる、「紫外線照射によるアクリルガラスの機械強度の制御」で研究成果を上げたのが、名古屋工業大学 工学専攻 生命・応用化学系プログラムの信川 … [もっと読む...] about 高分子ガラス材料の機械特性向上のメカニズムを解き明かす〜信川 省吾・名古屋工業大学 工学専攻 生命・応用化学系プログラム 准教授
焼かないセラミックス「人工天然鉱物」の社会実装を目指す〜橋本 忍・名古屋工業大学大学院 工学研究科 生命・応用科化学専攻 教授
地球環境の保全に配慮した観点から、新材料の作製や、省エネの製造プロセス技術に関心が高まっている。そこで、地殻変動に伴う、熱や圧力によって堆積岩などの鉱物が生成される自然のメカニズムを応用して、天然素材からセラミックスという人工物をつくり出す「ジオ・ミメティック」という新たな工法が開発された。それを手がけたのが、名古屋工業大学大学院 工学研究科 生命・応用科化学専攻の橋本 … [もっと読む...] about 焼かないセラミックス「人工天然鉱物」の社会実装を目指す〜橋本 忍・名古屋工業大学大学院 工学研究科 生命・応用科化学専攻 教授
溶媒金属を使って、効率的な希少金属の再利用を実現する〜奥村圭二・名古屋工業大学大学院 工学専攻 物理工学系プログラム材料機能分野 准教授
自動車のEV化や、スマートフォンなどの高性能化に伴い、希少金属の利用が増えており、資源の有効利用の観点から、使用済みとなった廃棄物からの有価金属の再利用が求められている。こうしたなか、電気自動車などのモーターに欠かせないネオジム磁石に用いられる希土類元素「ネオジム」の効率的な回収方法を研究しているのが名古屋工業大学大学院 工学専攻 物理工学系プログラム … [もっと読む...] about 溶媒金属を使って、効率的な希少金属の再利用を実現する〜奥村圭二・名古屋工業大学大学院 工学専攻 物理工学系プログラム材料機能分野 准教授
電気加熱を用いた新たな処理技術により、フッ素の再資源化を実現~安井 晋示・名古屋工業大学 電気・機械工学専攻 教授
エアコンや冷蔵庫などの冷媒、半導体などの製造用クリーニング、電気設備のガス絶縁開閉装置など、多岐にわたり活用されているフロン類。CFC(クロロフルオロカーボン)やHFC(ハイドロフルオロカーボン)、NF3(三フッ化窒素)、SF6(六フッ化硫黄)などの「フッ素化合物」で、温室効果ガスに指定されている。これら気体状のフッ化物に含まれるフッ素を再資源化し、温室効果ガスの排出量削減に寄与できる技術をいち早く開発したのが、名古屋工業大学 電気・機械工学専攻の安井晋示教授だ。従来のやり方ではなく、新たな処理技術を使って、純度の高いフッ化カルシウムの精製に成功した。今回は、研究の独自性や、この研究が生まれた背景、実用化の可能性についてお話を伺った。 酸素を使わずに、純度の高いフッ化カルシウムを精製 Q:研究の概要について教えてください。 地球温 … [もっと読む...] about 電気加熱を用いた新たな処理技術により、フッ素の再資源化を実現~安井 晋示・名古屋工業大学 電気・機械工学専攻 教授
セラミックス材料により、高効率な水素エネルギーの実現を目指す~岩本 雄二・名古屋工業大学大学院工学研究科 生命・応用化学専攻 教授
2050年、温室効果ガスの実質排出量ゼロとする「カーボンニュートラル」の実現に向けて、注目を集めているのが太陽光のエネルギーを駆動力とする「次世代の水素製造」である。この方法は、太陽光をもとに水から水素を生成させるだけでなく、水素と工場などから排出されるCO2から炭化水素を創出し、「人工光合成」と呼ばれるCO2を再利用する循環システムにもなっている。このなかで、水素を効率よく生成するために、低温で、大量の水の中でも水素だけを通すセラミックスの分離膜の開発に初めて成功したのが、名古屋工業大学 大学院工学研究科 生命・応用化学専攻の岩本雄二教授だ。その他にも、岩本教授の材料開発の技術は、水素製造においては多岐にわたって活用されている。セラミックス材料の可能性や、いま力を入れている海外との共同研究などについてお話を伺った。 次世代の水素製造で、水素 … [もっと読む...] about セラミックス材料により、高効率な水素エネルギーの実現を目指す~岩本 雄二・名古屋工業大学大学院工学研究科 生命・応用化学専攻 教授