ヒト・動物の発生過程においては、数千もの遺伝子が約一日以内に急激に転写され、正常な発生が進行する転写リプログラミングが起こっている。この転写リプログラミングがどのようにして生み出されるのかを解明すべく、次世代シークエンサー等を用いた最新の手法を伝統的な発生生物学の実験系に取り入れているのが、近畿大学の宮本圭講師だ。特定の遺伝子やタンパク質レベルで何が作用し初期化が誘導されているのか。この疑問を解明する、最先端の技術と方法論について伺った。
Q:研究の概要についてお聞かせください。
動物細胞のリプログラミングについて研究しています。リプログラミングは、日本語で言うと初期化を意味します。わかりやすく例えるなら、皆さんの使っているコンピューターにデータがたくさん詰まってしまったら、初期化をしますよね。動物細胞の初期化もこれと同じようなもので、考え方としては大人になった細胞を初期化して、いわゆる受精した直後の状態に戻すことです。
初期化のケースで最初にできたのは、クローン動物です。これはイギリスのガードン教授が開発したもので、私もガードン教授の元で長い間研究させていただきました。当時から、クローン動物ができるのはなぜだろうという疑問を抱き、初期化の研究をしていました。クローン動物ができたことによって、成体の細胞も受精卵の頃の状態に戻ることができるとわかったのです。しかし、なぜ戻ることができるのか、どんなタンパク質や遺伝子が作用しているのかについては、長い間謎のままでした。
私の研究では、特定の遺伝子やタンパク質レベルでどれが作用して初期化が誘導されているのかを研究しています。
研究をしていて興味を持ったのは、「生まれたての状態に戻れることがわかっても、なぜ戻れるのかその理由はわからない」という問いでした。これに答えられないとやはり解決にはなりませんし、クローン技術の効率もさほど高くなりません。クローン動物作出過程において、通常の方法であれば数%以下、つまり100回やって1~2回うまくいけばいい、その程度のレベルの効率でした。それがなぜうまくいかないのかについても、初期化がうまくいく理由がわかっていなかったためにきちんと答えることができていませんでした。
やはり原因の部分を答えられるようにしなければ、根本的な問題の解決や技術の発展にはつながりません。ですから、分子的に見てどの特定の遺伝子のおかげで良い結果が出るのかについて研究しつづけています。
一方で、卵の中に細胞を入れると、特定の初期化現象については非常に効率良く誘導されることもわかっています。これは、京都大学の山中先生が開発されたiPS細胞とはまた違った因子が働いていることがわかっていますが、では、この未知の因子は何かということで実験をしています。
実験では、核移植という実験系を用いています。核移植は、例えば卵子の中に皮膚から採ってきた細胞の核だけを移植する方法です。これでクローン動物が最初にできたため、学部生時代の私は最初に核移植技術を用いて研究していました。しかし、クローン動物ができるのは核移植の良い部分ですが、難しいのは一個の細胞につき一個の卵を使わなくてはならないことです。やはり色々な検証実験を行う過程で、一個の細胞しか解析に用いることができないのは非常に難しいことです。分子生物学や生化学をするにしても、例えるなら100万個くらいの細胞を用いて解析の実験系が成り立っているため、一個ではとても足りません。そこでどうにかしてリプログラミングを起こせる細胞の数を増やそうと、最初に立ち上げたのが無細胞抽出系でした。
無細胞抽出系とは少し難しい言葉に感じるかもしれませんが、内容的には非常に単純です。卵子を大量に持ってきてすりつぶすと、卵子の内側にある因子が抽出液の中に出てきます。従来はそこに一個の卵子につき一個の細胞を入れていましたが、それを一気に数千、数万個の単位にすれば、同時に多くの細胞にリプログラミングのような変化を起こせるのではないか。この考えから、実験系を立ち上げました。
これをもとに数多くの細胞に初期化を誘導して、生化学的に初期化を判断することができる。最終的にそれによってどの分子が変化するかというかたちで、分子レベルで初期化がわかるような研究を発展させてきました。従来の方法はクローン動物を作ることが目的で、それはそれで有用で良い形です。しかし、私の場合はなぜクローン動物ができるのか知ることが目的。そのためにこれまでリプログラミング誘導の目的で使用されていなかった実験系を作って、解析を楽にしたいというのが最初にありました。
近年でこそシングルセル技術(一個の細胞を用いた解析技術)がだいぶ広がってきましたが、私が研究を始めた当時、シングルセル技術はありませんでしたし、無細胞抽出形はカエルでは成功していたものの、哺乳類ではあまり発展していませんでした。そのため、哺乳類の卵でも同じようなことができたらいいなと考えながら、京都大学の今井裕教授の指導のもと、研究を進めていました。
その後、ガードン研究所に移ったあとは、ガードン教授が発展したカエル卵への核移植系と最新のシングルセル解析技術を結び付け、転写リプログラミングを分子レベルで解明するような研究を進めております。
Q:既存の研究とは違うものなのでしょうか?
もともと発生生物学自体に、古い歴史があります。高校の生物の教科書にも出てくるシュペーマンの移植実験は、発生生物学を代表する実験として有名ですね。シュペーマンは多くの研究成果を1900年初頭に発表しております。
当時の発生生物学は、胚が内胚葉、中胚葉、外胚葉へと発生していく過程で、例えば将来神経になるような胚の一部を表皮になるような箇所にもっていくとどんな細胞ができるのか。これを移植の実験で確認していました。
1980年代後半になるとノックアウトマウスができて、一つの遺伝子を壊すとどんな所に欠陥を持ったネズミが生まれるのかを調べることができるようになりました。これがわかると、例えば壊した遺伝子がどの臓器形成に関わっているのかがわかるわけです。このように、発生生物学に遺伝学的な要素や分子生物学的な要素が加わり、発生生物学が発展を遂げております。
私自身の専門は、「分子発生生物学」という形で書かせていただいています。分子レベルで発生現象やリプログラミング現象を理解しなければならないと思っています。
ノックアウトマウスなどを作って一つの遺伝子を壊すと、最終的に表現系が出てきます。そこでもし、どこかの臓器に不全があったとしても、もしかするとそれは二次的なものかもしれません。別の部分への影響が最終的にあらわれている可能性もあるからです。受精直後に働く遺伝子が次にどの遺伝子に効いて、その次に他の遺伝子に効いて、というように、発生はカスケード的に連なっている部分があります。私としては、このカスケードを知りたいと思うわけです。
特に興味があるのが、即座に起きる変化がどのようにして後々の変化につながっていくのか、その最初のきっかけを見つけられたら、発生やリプログラミングをより理解し、もっと制御できるのではないかという点です。受精であれば受精した直後、あるいは核移植だったら体細胞を入れた直後の瞬間ですね。発生や初期化などの上流にある出来事を知りたいのです。
Q:現在の実験にいたるまでのご自身の経緯をお聞かせください。
京都大学の農学部を卒業したのち、農学研究所に進みました。2009年に京都大学で博士号を取りまして、その後に異動したのが、イギリスのケンブリッジ大学のガードン研究所でした。
2004年くらいからリプログラミングの研究を開始し、博士号を取るまでリプログラミング因子についての研究をずっと続けてきました。カエルやブタを使ったりして、カエルの卵子を用いた卵細胞抽出系の実験は運良くポスドク先のボスであるガードン教授も知ってくださっていて、そこからまた次のプロジェクトにつながっていきました。
ガードン研究所は、発生生物学とガンの研究を中心に行なう研究所です。当時もガードン研究所のガードン研究室では、リプログラミングの研究がメインで、アフリカツメガエルを用いて実験を行なっていました。特にインジェクターという実験機具を用いてカエルの卵に実際に核移植を行なっていました。
特徴として、カエルはマウスと違って非常にたくさんの卵を取ることができます。マウスでは30個ほどしか卵を取れませんが、カエルの場合は数千個の卵を取ることができます。大きさも、カエルの卵はマウスの卵よりも直径でみて10倍近くの大きさを持っています。そのため顕微鏡でも簡単に観察ができますし、インジェクションという顕微操作がやりやすいという利点があります。
ガードン教授の所では2009年から博士研究員として在籍していましたが、その後2015年には近畿大学に移りまして、現在まで研究を続けています。
近畿大学に移ってからはカエルを用いた実験とは別に、マウスの施設もありますので、マウスとカエルの卵を用いた研究を両立して行なっています。カエルは先ほどお話ししたような利点がありますが、マウスには哺乳類の発生などを知ることができる利点がありますので、マウスとカエル両方の良い所を利用してリプログラミング現象や初期発生を研究しています。
さて、カエルの卵子にはたくさんのステージがあって、精子と受精できる卵子は成熟卵と呼ばれています。精子と受精して発生が進むのは成熟した卵で、その前の段階の未成熟卵子というものもあり、精子とは受精できないけれど卵子の中にはリプログラミングを誘導できる因子を持っているというものがあるわけです。
成熟卵も未成熟卵もどちらも卵子ですが、機能としては違いがあります。ガードン先生の研究所では未成熟の卵子に核移植を行ない、その中で誘導される初期化の現象を探っていました。私も実際にその実験系を紹介してもらいましたが、最初に行なった時は普通に成熟した卵を用いたほうが早いのではないかと思っていました。
しかしガードン先生には考えがあって、成熟した卵に細胞を移植すると、その後はどんどん発生が進みクローン動物ができます。ここでまず、遺伝子が機能するためには転写という過程があり、遺伝子が発現してRNAができて、タンパク質ができていくというような一連の作業があるわけです。そのうち一個の作業を知りたいとしても、カエルの場合、転写が誘導されるまでには10回以上細胞分裂を繰り返さなくてはなりません。つまり、転写が起きるまでにものすごく時間がかかってしまうわけです。他にも、実際に転写が起きるまでにDNA複製など様々なことが起きてしまいますから、転写誘導に関わる要因が特定できなくなってしまいます。
しかしこれが未成熟の卵子だった場合は、細胞の分裂もDNAの複製も起きません。また核を入れてからすぐ、1日~2日以内には転写が観察できます。ですから、すごくダイレクトに、転写リプログラミングの現象だけを知ることができるのです。
最初はこの考えが理解できませんでしたが、すぐに優れている方法だなと感じました。生物自体がそもそもすごく複雑なものですが、その複雑な中で何か知りたい時は、一個の要素をピックアップして見ていくのがベストなアプローチです。実際にその実験系を用いて転写が変化するまでに必要な卵の中の因子を何個か同定に成功し、転写リプログラミングの分子機構というものが少しだけではありますが、徐々にわかりかけてきています。
Q:現在は日本に戻られましたが、ガードン研究所時代とどのような違いがありますか?
2015年に日本の近畿大学に移りまして、独立して実験ができる環境を与えていただいたので、こちらでも引き続き初期化がどのようにして起こるのかについての研究をしています。そこからさらに一歩進めようと、初期化の機構がある程度わかったのであれば、少し工夫すればもっとクローン動物の作出効率が上がるのではないかと考え、効率を上げるための研究もやり始めました。
最初のほうの説明に戻りますが、クローン動物は作出効率が悪いという面があります。何故かというと、どうしてクローンがうまれるかはっきりとわかっていなかったからです。私たちや世界の研究者たちの研究から、どのようにしてリプログラミングが起きるのかがだいぶわかってきたため、少し工夫すればもっと効率が上げられます。従来でしたら数パーセント以下の効率でしたが、リプログラミングに効くであろう、エピジェネティックな修飾状態を変えてやることにより、効率向上につながるのではないかと考えました。
エピジェネティクスとは、DNAの塩基配列といった遺伝情報ではなく、ヒストンタンパク質の修飾など、後生的に獲得される形質のことを言います。細胞が元々の初期胚から大人の細胞になるまでに、遺伝子の配列というのは変わりません。しかし、我々の体は全く異なる細胞から構成されます。例えば体細胞(大人の細胞)であれば、組織ごとに違うエピジェネティク状態を持っており、それにより遺伝子発現の違いをうみ、細胞の性質の違いが現れます。そこで、リプログラミングの為には、体細胞のエピジェネティック状態を初期胚の状態に戻してやる必要があり、体細胞に特徴的なエピジェネティック状態を消す作業を促進させるような物質はリプログラミングに有効なはずです。
エピジェネティック状態を積極的に変化させる物質は過去の研究からもわかってきていますので、その既知のメカニズムを元に物質を組み合わせ、京都大学の山田雅保先生との共同研究により、クローン動物の効率が上がる方法を発見することにつながりました。クローン胚を培養している培地中にその物質を入れてやるだけで、数パーセントから15パーセント程度までクローンマウスの作出効率を上昇させることができるのです。
Q:日々の研究の環境を海外と比べてみてどう思いますか?
基礎研究だけを見ると、正直なところ日本のほうがやりづらい感じはします。というのも、やはり海外は分業制がすごく整っているのです。
私がいたケンブリッジ大学のガードン研究所の話になりますが、まず実験するためには培地とか試薬などが必要になるわけですが、それらを用意してくれる専用のスタッフがいます。あるいは日本で高性能の顕微鏡を使って何かを観察したいとなると、その顕微鏡は自分で買わなければならない場合が多いです。一方、海外の場合は研究所自体にコアの施設があり、使用料を払うだけで使うことができます。
この点、日本でも理研であれば整っているかと思います。しかし、そのコアの施設ごとに特別なスタッフがいて、実験補助をしてくれるシステムは日本の研究機関でもなかなかないと思います。例えば顕微鏡のエリアには顕微鏡のスペシャリストがいて相談に行くこともできますし、こんなことがしたいと言えば可能な限り手伝ってくれたりもします。
日本は一から勉強して、すべての機械を使いこなせるようにならないとなかなか結果が出せない面がありますが、海外はそうではありません。例えば博士の学生さんでも同様のサポートシステムがありますから、すぐに結果が出せるのです。重要なのは考え方であって、理論にのっとったアイデアさえあれば、それを実現化するのが早いと言えます。
Q:倫理的な課題について感じている点はありますか?
私の研究は卵子などを用いる研究ですので、倫理面は特に厳しく審査し、管理体制を整える必要があると考えております。現状ではヒトの卵子を用いた研究は、私自身では行なっておりません。ヒトに関することとなると特に規制が厳しいので、倫理審査にも多くの時間をかけています。
もちろん規制が厳しいのは悪いことではなくて、良い部分もあります。ただ何かすごく重要な研究課題があって、それを推進させたい時にも特例をなかなか許さない体制は少し厳しすぎるのではないかなとも思います。ですから、より柔軟に対応していただけるシステムや体制があればいいのではないか、と思います。研究の分野は海外と競争になることが多いです。ヒトに関わる課題に対して競争すること自体に疑問を覚えることもありますが。しかし最終的には医療にできるだけ早く還元したい気持ちがありますので、そのような特例に関しては適宜委員会などを開いて、スピードアップをできるような体制が整えばいいなと思っています。実際に、特別に推進するべき研究においては、私が述べたような体制も出来ているようです。
また、書類の処理が多いというのは感じていますね。イギリスで似たような研究をしているときも、申請書類は多くありましたが、日本のほうが圧倒的に煩雑です。不必要な煩雑さを消して、必要最小限の事務処理を実現すれば人件費も少なくなりますし、全体の効率も上がります。最終的に国民に還ってくる利益も多くなるのではないでしょうか。新しい世代に移るにつれて、この辺りも徐々に変化させることができればと考えております。
Q:続いて、技術的な課題について感じている点はありますか?
最初に話した部分に戻ってきますが、私たちが扱っているのは希少細胞といって、多く回収することが難しい細胞です。希少細胞の場合はシングルセル技術(一個の細胞を用いた解析技術)が非常に役に立つわけです。シングルセル技術も非常に発達してきて、転写産物(トランスクリプトーム)であったりとか、遺伝子の配列(ゲノミクス)であったりとかをシングルセルレベルで色々と知ることができてきたのですが、現状ではまだ、得られたデータを最大限活用できていない気がします。
現時点では技術が出始めた時期ということもあり活用にはまだ早い話なのかもしれませんが、一つの細胞を回収してきて、その細胞の全部の転写産物を知ったとしても、この転写発現パターンが正常なのか、異常なのかを評価するのは、最終的にはたくさんのデータを取ってこないとわからないわけです。結局一個の細胞を取ったとしても、たくさん揃わなければ最終的には何もわからないわけですから、どのようにして一個の細胞でのシングルセルの技術というものを応用して(解析系を)立ち上げていくかを考えています。
現在は大量のデータが出揃う時代にはなってきていますが、やはりそれを上手く活用できるデータ解析のツールや研究者の知識が不足しているかなと思います。それが解決されていけば、更に一歩進むのではないかなと考えています。
Q:産業的な応用については、どのようにお考えですか?
産業的な面だと、初期化であれば効率を上げることがiPS細胞の作出効率向上にもつながるかもしれません。初期化の機構解明が最終的に産業に返すようなかたちの一つとして、一番わかりやすい例かと思います。
また、私の研究であれば、不妊治療などにもつながっていきます。受精卵が正常に発生しなかったケースに不妊治療が適用されることが多いです。そのため、なぜ発生しないかという理由がわかれば、それを不妊治療に応用できます。より効率良く治療が進むのではないでしょうか。現在は6組のうち1組ほどの割合のカップルが不妊治療を受けていると言われています。ただ成功率自体は20~30パーセントくらいですので、まだまだ改善の余地があると思います。経済的にもものすごく負担がかかりますから、その部分でも効率化を進めていくことができれば、大きな一つの課題の解決になるのではないかなと思っています。
Q:多くの学生を指導していらっしゃいますが、この分野を志す研究者に伝えていることはありますか?
幸運にも非常に多くの学生さんに囲まれております。私の研究テーマに関連して研究を進めている学生さんは20~30名ほどです。3年生、4年生、大学院の学生です。
生物理工学部ということで、やはり生物に興味のある学生さんがメインですね。学生さんとお話ししていてわかったのは、比較的わかりやすい話題からこの分野に興味を持ち始める人が多いことです。例えばがん治療についてなど、みなさんがニュースでよく聞くような話題です。
最近は非常に真面目で良い子が多い気がしています。しかし、その分、野心的な学生さんが少ないです。イギリスのケンブリッジ大学にいる時は、ものすごくはっきりと自分の夢を持った学生さんが多くいました。正直な話、知識量や頭の回転で比べても日本の学生さんとさほど変わりはありません。ただケンブリッジ大学の学生さんの方が野心を持っていて、将来自分はこうなるのだ、という強いビジョンを持って研究に取り組んでいる人が多かったです。
日本の学生さんには、もう少し強いビジョンと野心を持って突き進んでもらいたいなと思います。特に研究の業界に行くのであれば辛抱強さも求められます。自分の意思は強く、例えば一つの現象があったらそれをどうしても明らかにするんだという、何か最後まで続けられるような意思を持ってほしいと思います。僕自身もその気持ちが途絶えないように日々努力しております。
Q:企業との共同研究において期待することは何でしょうか。
企業とも共同研究をさせてもらっています。すごく助けられる部分も多いですし、今後も積極的に進めていくべきだと思っています。ひとつ言うなら、製薬会社からの基礎研究に対する共同研究プロジェクトの公募などをもう少し増やしてもらえたら助かります。こちら側からのアプローチもしやすいかなと思います。
さまざまな機会で大学を通じてアプローチをしたり、反対にお話しを頂いたりすることはありますが、やはり助成金を通してのアプローチは一つの理想的な形だと思います。基礎研究をベースとした助成事業を行っていただき、将来的に大きなプロジェクトにつなげていけたらと思っています。
Q:今後実現していきたいことについてお聞かせください。
数年中とまではいかないかもしれませんが、やはり私が興味を持つのは初期化などが最初に起きるきっかけの部分です。このきっかけの部分については、実はまだあまりわかっていません。初期化の一番最初に起こるイベントについて知ることができたら、後々のカスケードもわかっていきます。初期化を完全に理解するためにも「きっかけ」についてより詳しく解明していきたいです。(了)
宮本 圭
みやもと・けい
生物理工学部 遺伝子工学科 講師。
2004年、京都大学農学部卒業。2009年 京都大学農学研究科博士後期課程 修了 博士(農学)。同年、英国ケンブリッジ大学ガードン研究所ガードン研究室 博士研究員。日本学術振興会海外特別研究員を経て、2012年よりハーチェルスミスリサーチフェロー、及びケンブリッジ大学ウォルソンカレッジフェロー。2015年4月より近畿大学生物理工学部 常勤講師。