日本の下水処理場では、「活性汚泥」と呼ばれる微生物の集団を用いた下水の分解処理がなされている。この活性汚泥は長年使われているが、その正確なメカニズムが解明されないまま今日に至っている。こうしたなか、近年目覚ましい発達を遂げている次世代シーケンサーを用いて、「微生物生態学」の観点から活性汚泥のメカニズム解明に取り組んでいるのが、産業技術総合研究所環境管理研究部門の佐藤由也主任研究員だ。数千種類の微生物の集合体を観察する手法と研究アプローチについて、佐藤研究員に話を伺った。 微生物生態学の観点から活性汚泥を研究 Q:まずは研究の概要について教えてください。 我々の家庭やオフィスなど、人がいるところでは必ずと言っていいほど水を使います。使った水は必ず処理をしてからでないと、川などに流すことはできません。我々が行っているのは、処理場に集められた下水を川に流す … [もっと読む...] about 活性汚泥のメカニズムを最新技術で解明する〜佐藤由也・産業技術総合研究所環境管理研究部門 主任研究員
匂いの研究から、行動・意識の神経回路メカニズムを解明する〜吉原良浩・理化学研究所脳神経科学研究センター システム分子行動学研究チーム チームリーダー
生物の持つ五感のうち、最も原始的な感覚が嗅覚である。未解明な部分も多い嗅覚メカニズムを解明することで、生物のさまざまな行動の作動原理が理解されることが期待されている。こうしたなか、マウスやゼブラフィッシュをモデル生物として用い、匂い入力から行動出力へと至る嗅覚神経回路メカニズムの統合的研究を手掛けているのが、理化学研究所脳神経科学研究センター … [もっと読む...] about 匂いの研究から、行動・意識の神経回路メカニズムを解明する〜吉原良浩・理化学研究所脳神経科学研究センター システム分子行動学研究チーム チームリーダー
細胞を改造し、あらたな薬にする〜小嶋 良輔・東京大学大学院医学系研究科 助教
細胞をプログラミングし、従来では不可能だった治療を可能にする「合成生物学」が、近年めざましい発達をとげている。こうしたなか、制御原理があまり開発されてこなかった「細胞間コミュニケーション」に注目し、次世代医療に応用可能な形でエンジニアリングすることを目指した研究を行なっているのが、東京大学大学院 医学系研究科生体物理医学専攻 医用生体工学講座 生体情報学分野の小嶋 … [もっと読む...] about 細胞を改造し、あらたな薬にする〜小嶋 良輔・東京大学大学院医学系研究科 助教
微生物のロドプシン研究で、生体メカニズムを解明する〜井上 圭一・東京大学物性研究所・機能物性研究グループ 准教授
生物の活動において、知覚センサーやエネルギー源として役割を果たすのが、さまざまな光受容タンパク質である。光受容タンパク質「ロドプシン」は、動物や微生物の生体内で、視覚情報の伝達や光によるイオンの輸送を行う物質であるが、近年まで分子メカニズムの解明が進んでおらず、その全容が判明していなかった。こうしたなか、先端的分光法を用いて、微生物型ロドプシンを中心としたそのメカニズム解明を目指しているのが、東京大学物性研究所・機能物性研究グループの井上 … [もっと読む...] about 微生物のロドプシン研究で、生体メカニズムを解明する〜井上 圭一・東京大学物性研究所・機能物性研究グループ 准教授
触覚センサーの開発で、ロボットの社会応用を実現する〜室山真徳・東北大学マイクロシステム融合研究開発センター 准教授
ものづくりや介護、農業などさまざまな場面で、ロボットの活用が望まれている。そこで必要になるのが、高性能で省電力な触覚センサーの開発だ。こうしたなか、次世代ロボット用触覚センサネットワークシステム実現のため、LSI、MEMS、ソフトウェア、システム全体を統括する研究開発を行なっているのが、東北大学マイクロシステム融合研究開発センターの室山真徳准教授だ。今回は室山准教授に、触覚センサーの開発がもたらす社会的インパクトについて話を伺った。 現場のニーズをもとにロボットの触覚を開発 Q:まずは、研究の概要について教えてください。 私たちが行なっているのは、ロボットに皮膚感覚をつけるための研究です。五感をベースにして考えると、カメラなどの「視覚」をはじめ、Google HomeやAmazon … [もっと読む...] about 触覚センサーの開発で、ロボットの社会応用を実現する〜室山真徳・東北大学マイクロシステム融合研究開発センター 准教授
AIと音楽を組み合わせ、音楽制作をデータベース化する〜浜中雅俊・理化学研究所 革新知能統合研究センター チームリーダー
近年めざましい発達を遂げるAI(人工知能)は、クリエイティブの分野でも活用が期待されている。長年にわたって音楽の専門家がおこなう操作の事例をデータベースに蓄積し、再利用するシステムを構築していたのが、理化学研究所 革新知能統合研究センター(AIP)の音楽情報知能チームの浜中雅俊チームリーダーだ。一般の利用を踏まえた音楽研究について、その最新状況をうかがった。 音楽家の直感を「構造」であらわす Q:まずは、研究の概要について教えてください。 音楽を作ったり曲を編曲したりすることは、足し算・引き算のように記号で表現をして計算することができるものです。例えばある式ができて、別の曲にそれを足したり掛けたりすることで、また新しい曲ができたりするわけです。これは言い換えれば、「音楽のメロディーに対する操作をデータベースに蓄積していくと、音楽を再利用することができ … [もっと読む...] about AIと音楽を組み合わせ、音楽制作をデータベース化する〜浜中雅俊・理化学研究所 革新知能統合研究センター チームリーダー
最小単位からものを組み上げ、未踏領域を開拓する〜寺尾潤・東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 相関基礎科学系教授
より「小さく」していく従来のものづくりの手法は、年々物理的・経済的な限界を迎えつつある。そこで注目されているのが、有機合成による分子デバイスの作製だ。フラスコで行う合成化学的手法は、従来の高価な微細加工装置やレアメタルを用いることなく、安価な反応装置と有機分子により電子回路の作製が可能になるため、大きな期待が寄せられている。こうしたなか、有機化学、高分子化学、応用物理など複数分野を融合し、超微小・超低消費電力の分子エレクトロニクス素子の創成を行う研究に取り組んでいるのが、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 相関基礎科学系の寺尾 潤 … [もっと読む...] about 最小単位からものを組み上げ、未踏領域を開拓する〜寺尾潤・東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 相関基礎科学系教授
世界最高の電子顕微鏡の開発で、先端ナノ計測を可能にする〜柴田直哉・東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構先端ナノ計測センター教授
近年の電子顕微鏡の発展はめざましく、原子サイズ以下の分解能を持つまでに進化している。こうしたなか、先端ナノ計測を可能にする電子顕微鏡の開発に取り組み、ナノテクノロジーにブレイクスルーを起こすと期待されているのが、東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構先端ナノ計測センターの柴田直哉教授だ。最近では、磁石や鉄鋼など磁性材料の原子が直接見える画期的な電子顕微鏡の開発を発表するなど、めざましい成果を挙げている柴田教授に、電子顕微鏡がもたらす無限の可能性について話を伺った。 電子の振る舞いを「直接」見るレベルまで開発を進める Q:まずは研究のニーズについて教えてください。 現在の顕微鏡は性能がたいへん向上しておりますが、その顕微鏡の中でも分解能が一番高いものが電子顕微鏡です。現在、最高性能のものでは「40.5ピコメートル」という分解能が出ています。これは1 … [もっと読む...] about 世界最高の電子顕微鏡の開発で、先端ナノ計測を可能にする〜柴田直哉・東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構先端ナノ計測センター教授
ブレイン・マシン・インターフェースで脳の力を引き出す〜牛場潤一・慶應義塾大学理工学部准教授
脳血管疾患では、罹患後に生じる運動や高次機能障害の予後不良性、そしてその結果として増す介護負担など、長期にわたるさまざまな課題が問題視されている。こうしたなか、脳に残された回路を呼び覚まし、病気やけがで失った神経機能を回復させる研究が注目を集めている。BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)と呼ばれるこの装置の開発研究に取り組んでいるのが、慶應義塾大学理工学部 … [もっと読む...] about ブレイン・マシン・インターフェースで脳の力を引き出す〜牛場潤一・慶應義塾大学理工学部准教授
シナプスとマイクログリアの関係を探る〜小山隆太・東京大学大学院薬学系研究科 准教授
脳が正常な機能を発揮するためには、精密に配線された神経回路の存在が必要だ。自閉スペクトラム症(ASD)やてんかんなどの原因は、シナプス形成不全などの神経回路構造の異変にあるとされている。近年、このシナプス形成について、マイクログリアやアストロサイトといったグリア細胞が積極的に関与することが示されつつある。その解明をすべく、モデル動物を利用した健常脳および病態脳における神経回路形成へのグリアの関与を研究しているのが、東京大学大学院薬学系研究科 … [もっと読む...] about シナプスとマイクログリアの関係を探る〜小山隆太・東京大学大学院薬学系研究科 准教授