エネルギー問題への関心が年々高まるなか、限られた天然資源を有効利用する技術が求められている。そんななか、「触媒」をキーワードに、水や二酸化炭素、あるいはメタンなど、豊富で環境負荷の低い「非在来型天然資源」を利活用するための材料・技術の開発に取り組んでいるのが、物質・材料研究機構の阿部英樹・主任研究員だ。「全く新しい触媒の組み合わせは、意図的な偶然によって発見される」と語る阿部氏に、触媒の基本的な役割、独自の研究手法について伺った。 効率的なエネルギー運搬のために必要な「触媒」を研究 Q:まずは、研究の概要についてお聞かせください。 「触媒」について研究をしています。触媒というものを広い意味でまとめると、「分子エネルギー変換材料」といえます。分子をいじる、分子の結合を組み換えたり、切ったり貼ったりを、その不必要な外部からのエネルギーの供与を経ずに、最も … [もっと読む...] about あらたな触媒の発見により、エネルギー問題の非効率を解決する〜阿部英樹・物質・材料研究機構主任研究員
Nano Technology/Materials
柔らかい有機デバイスをバイオ医療に応用し、新たな社会価値を創造する〜染谷隆夫・東京大学大学院教授
「曲がるディスプレイ」という言葉が一般的になるなど、有機デバイスのあらたな開発が注目されている。そんななか、シート状のフィルムの上に大面積で簡単に製造ができる「柔らかい」デバイスを開発し、有機デバイスの医療・バイオ分野への応用を積極的に推し進めているのが、東京大学大学院 工学系研究科 電気系工学専攻の染谷 … [もっと読む...] about 柔らかい有機デバイスをバイオ医療に応用し、新たな社会価値を創造する〜染谷隆夫・東京大学大学院教授
ゲートエレクトロニクスの研究で最大効率を実現する〜桜井 貴康・東京大学国際・産学共同研究センター教授
近年、世の中のさまざまな機械や電力システムを制御するために、半導体を使って非常に高い電圧や大きな電流をコントロールすることが一般的になりつつある。そこで必要になるのが、従来では弱電といわれていた分野とパワーエレクトロニクス(強電)といわれていた分野の融合である。その境界となる「ゲートエレクトロニクス」の分野を中心となって研究しているのが、東京大学 国際・産学共同研究センターの桜井 … [もっと読む...] about ゲートエレクトロニクスの研究で最大効率を実現する〜桜井 貴康・東京大学国際・産学共同研究センター教授
パワーエレクトロニクスを研究し、人間の飽くなき探究心を実現する~伊東 淳一・長岡技術科学大学教授
近年、電気自動車を街で見かけることも多くなり、電力技術に注目が高まっている。いかに電気効率を上げるかというのは、電力を無駄なく使っていく上で必要不可欠であり、基礎的な技術研究とそれを実証化する産業化プロセスが不可欠である。パワーエレクトロニクスの専門家としてこの分野に長年携わるのが、長岡技術科学大学の伊東淳一教授だ。今回は社会一般におけるパワーエレクトロニクスの必要性から、電力技術がさらに発展を遂げるために必要な考え方について伺った。 現代生活に必須のパワーエレクトロニクスを全般的に研究 Q: まずは、パワーエレクトロニクスの研究概要、社会的なニーズについてお聞かせください。 電力を電子技術や制御技術を使って効率よく制御しようとはかるのが「パワーエレクトロニクス」です。「パワーエレクトロニクス」という言葉は1970 … [もっと読む...] about パワーエレクトロニクスを研究し、人間の飽くなき探究心を実現する~伊東 淳一・長岡技術科学大学教授
工作機械向けソフトウェア開発で、産業の基盤を強化する〜中本圭一・東京農工大学准教授
素材を削り、必要な形状・寸法に加工する工作機械は、長年我が国が世界のトップレベルに君臨しつづける分野だ。こうした技術や知見は日々複雑化・高精度化が進んでおり、職人技などの属人的なものから、加工支援ソフトウェアの開発・普及を通じて一般化されることが求められている。「基盤となる工作機械とそれを使いこなす加工技術、その両方があわさることが必要だ」とし、その両面から実用的な研究を進めるのが東京農工大学の中本准教授だ。今回は世界における日本の製造業の立ち位置やその特殊性、ソフトウェアの必要性についてお伺いした。 工作機械を使いこなすノウハウをソフトウェア化 Q:まず、研究の概要やニーズからお聞かせください。 研究内容をお話しする前に、まず工作機械についてご紹介します。穴を開けるためのドリル加工が最も分かりやすい例だと思いますが、何かの素材を削って必要な形 … [もっと読む...] about 工作機械向けソフトウェア開発で、産業の基盤を強化する〜中本圭一・東京農工大学准教授
金属を使わない、有機化合物のみの触媒をつくる〜秋山隆彦・学習院大学理学部教授
現在、触媒として使われている主流は金属錯体であり、パラジウムやロジウムなどの金属に有機物がついたものが用いられるのが一般的だ。しかし、こうした金属の使用を前提としていると、資源を持たない日本では他国との貿易関係に産業が依存してしまうことになり、また微量でも毒性が残るという課題もある。こうした問題を乗り越え、安全度を高めるべく、有機分子だけで触媒作用を示す研究を行なっているのが、学習院大学の秋山教授だ。今回は、金属を使わない有機化合物だけの触媒作用の研究の概要について伺った。 金属錯体の課題を乗り越える Q:研究の概要からお聞かせください。そもそも有機触媒とはどのようなものなのでしょうか? 触媒とは、何かと何かを混ぜる時にその化学反応を促進させるもののことをいいます。触媒は、ノーベル化学賞授与の対象として注目されることが頻繁にあります。例えば、2 … [もっと読む...] about 金属を使わない、有機化合物のみの触媒をつくる〜秋山隆彦・学習院大学理学部教授
ダイヤモンドで、次世代量子通信の普及をめざす〜小坂英男・横浜国立大学教授
次世代の通信ネットワークを実現するために、量子通信の可能性に期待が高まっている。盗聴や不正アクセスを未然にブロックするというニーズが高まっているのに対し、中継技術的には100キロをこえる中距離であれば一度中継しなければならないという制約がある。こうした課題とニーズをとらえ、ブレイクスルーを目指しているのが小坂教授だ。今回は通信技術の近年の進歩と今後の研究課題について伺った。 長距離かつ中継不要の量子通信を可能にする Q:まずは、研究内容をお話しください。 量子通信について研究しています。量子情報の中には、量子コンピュータという、昨今騒がれているものがありまして、その一方で量子通信というものがあります。量子コンピュータと量子通信は全然違うように見えますが、いわゆる盾と矛の関係になっていて、量子通信をしようとするという目的は元々盗聴を避けたいという … [もっと読む...] about ダイヤモンドで、次世代量子通信の普及をめざす〜小坂英男・横浜国立大学教授
スピントロニクスの応用の可能性を探る〜齊藤英治・東北大学 材料科学高等研究所 主任研究者
スピントロニクスは、2000年代中頃くらいから研究が開始された若い分野であるが、日本はこの分野の研究が非常に盛んに進んでいる。このなかで、スピンの基礎物理法則を解明することで、スピントロニクスを応用し拡大した新たな学問体系を作ろうとしているのが、東北大学 … [もっと読む...] about スピントロニクスの応用の可能性を探る〜齊藤英治・東北大学 材料科学高等研究所 主任研究者
「美しい」分子にこだわり、炭素の未知なる可能性を追求する〜伊丹 健一郎・トランスフォーマティブ生命分子研究所 (ITbM)拠点長
カーボンナノチューブ、カーボンナノベルトなどの名称で近年注目されるナノカーボンであるが、現行のものは混合物ゆえ特性が安定せず、まだ万全とはいえないという状況である。この課題を解決すべく、「美しい」分子を標榜し、単一構造の分子をつくりだしてブレイクスルーを起こそうとしているのが、トランスフォーマティブ生命分子研究所 (ITbM)の伊丹健一郎 … [もっと読む...] about 「美しい」分子にこだわり、炭素の未知なる可能性を追求する〜伊丹 健一郎・トランスフォーマティブ生命分子研究所 (ITbM)拠点長
熱処理技術で、金属の老朽化を防ぐ〜細井 厚志・早稲田大学 理工学術院 准教授
昨今、老朽化した道路やトンネルなどの社会インフラの修繕が求められている。それらの多くは高度経済成長期の短期間で工事がなされ、その設計寿命が現在になって表面化している、というわけだ。金属の亀裂治癒技術の確立を目指し、破壊や治癒の基礎的な研究から土台を固めているのが、早稲田大学 … [もっと読む...] about 熱処理技術で、金属の老朽化を防ぐ〜細井 厚志・早稲田大学 理工学術院 准教授