現在、免疫学の分野で研究のテーマとして注目されているのがマクロファージだ。マクロファージはこれまで、細菌やウイルスなどを食べて消化するだけの細胞と考えられていたが、近年、マクロファージは様々な部分で生命機能に重要な役割を果たしているとわかってきている。大別すれば、食べて消化し炎症に関わるものと、炎症を抑えるものの2種類があり、その違いとふるまいの研究が求められているが、その分野で精力的に研究を進めているのが大阪大学免疫学フロンティア研究センターの審良(あきら)拠点長だ。じつは近年にも大きな発見がなされた免疫学の経緯をたどりながら、その研究に迫った。
じつは歴史が「浅い」免疫学
Q:現在の研究内容をお聞かせください。
研究内容をお話しする前に、免疫学のなりたちについてお話しします。実は免疫学は非常に歴史が浅く、近年になってようやく解明されたといえます。
免疫学の歴史的な観点からお話しすると、まず免疫学の研究はイギリスの医学者であるジェンナーの天然痘の研究から始まったと言えます。天然痘は現在でも非常に危険な病気だと言われていますが、それとよく似た菌である牛痘は比較的軽い病気だと言われていました。
ジェンナーは、一度牛痘にかかった人間は天然痘になりにくいという農民達の話に注目し、研究を始めました。免疫は疫(病気)を免れると書きます。つまり一度その病気にかかると二度とかからなくなる、そこにどんなメカニズムがあるのかを調べていく事が免疫学の研究です。
というのも、昔は病気と病原体の関係性がよくわかっていなかったため、悪魔が体に入り込むから病気になるなどと言われていました。しかしその関係性が少しずつ分かり始めてきた頃に、ジェンナーのワクチンの研究が始まります。「なぜ弱い牛痘のワクチンを先に接種すると、強毒な天然痘にかかりにくくなるのか」、この疑問から研究が始まりました。
その後、1900年頃にはドイツの細菌学者であるポール・エーリヒが抗原抗体反応の概念を提唱します。抗原抗体反応は、身体の中に抗原が入ってくると免疫細胞の表面にある受容体が刺激を受け、抗原を中和するものです。これは少し違う部分もありますが、現在の免疫反応の研究メカニズムとほとんど同じものです。
また同じ頃にはロシアの微生物学者であるメチニコフが生体防御の研究をしていました。ミジンコやナマコなどの下等な動物に異物を入れると、集まってきてその異物を食べてしまう食細胞があり、これが病原体を殺していると言い出しました。
ここで面白いのは、2人共同じ時にノーベル賞を受賞したことです。ポール・エーリヒは抗原抗体反応の概念を、メチニコフは免疫の中心は食細胞であると唱えたわけです。この2つの概念は現在の僕らの研究にも繋がっています。 現在では抗原抗体反応を獲得免疫、食細胞を自然免疫と呼んでいます。免疫の柱とも言える部分がこの当時にできたわけです。
どちらが哺乳動物に対して大事なものか、ノーベル賞受賞後には激しい論争が起こりました。哺乳動物において一番大事なのは病原体を識別する事です。例えばインフルエンザのワクチンを打っても、インフルエンザにしか効果はありません。他のワクチンもそうですが、特定の病原にしか効果はありません。免疫学はこの特異性から始まっているとも言えます。
一回打ったワクチンの病原体を記憶して、次はすみやかに壊しにいく。これはジェンナーの概念でもあります。一方でメチニコフの概念は、どんなものでも来たものは全てランダムに食べてしまうことです。やはりメチニコフの概念の方が弱く、本人もそれを認めていました。
下等な動物に対しては自然免疫を使うけれども、高等な脊椎動物には獲得免疫の方が優位になり、進化の過程で自然免疫は必要なくなる。脊椎動物になった時に初めて獲得免疫を得る事になって、より効果的に特異的な病原体に対して対処でき、同時に免疫記憶というメモリーも持っている。こうしてみると、やはりジェンナーの概念に繋がりますね。
その後、メチニコフはこの研究から離れる事になってしまいますが、次に何をしたのかというと、ブルガリアで長寿についての研究を始めました。ここで彼はヨーグルトをよく食べる人が長生きをしていて、ヨーグルトを日常的に食べる事で腸の環境がものすごく良くなっていることに着目します。現在でも健康に良いと話題のヨーグルトですが、この頃からメチニコフはヨーグルトの効果に着目しておりヨーグルトの父とも呼ばれています。免疫の研究からは離れてしまったものの、自然免疫の発見をした彼はやはり偉大な人物であると言えますね。
さて、免疫に関してはその後、やはり獲得免疫が重要視されるようになります。さらに様々な抗体が発見されたり、その抗体がどんな構造をしているかなどもこの頃にわかってきました。有名な利根川博士の免疫グロブリン遺伝子の再構成の研究で、どのようにして抗体の多様性ができるかなどが、遺伝子のレベルで明らかになったのです。これが1970年代後半の出来事です。
それまでも長い間ワクチンの研究がされ続けてきましたが、メカニズムに関しての研究が盛んになったのは比較的最近の話だと言えます。抗体がどんなものかというメカニズムや、T細胞やB細胞が大事だとわかってきたのもここ30~40年くらいの話です。
じつは私が大学に入った1970年頃はまだ免疫学はなく、「血清学」と呼ばれていました。血液型の判定や血液の周りにある様々なタンパク質などの研究はありましたが、免疫学はありませんでした。T細胞とB細胞に相互作用があるとわかってきたのも1970年頃で、その後に情報交換をするホルモンのような物質であるサイトカインが出てきて、T細胞は直接ウイルスのいる細胞を殺すこと、B細胞は抗体を出して液性免疫に関わり、体液中にいる病原体を殺すこと等、1980年代はこのような内容で教科書のモデルがまとまりました。
ここで再び自然免疫が盛り返してきます。1990年代頃ですから、かなり最近の話です。その頃から樹状細胞と呼ばれる細胞が登場してきます。樹状細胞はメチニコフが言っていた食細胞にあたるものです。様々な病原体を食べてバラバラにして、小さなペプチドの状態になったものを、組織適合抗原と呼ばれるお皿のようなものに乗せて、感染組織からリンパ節まで移動します。免疫細胞で組織から移動できるのは樹状細胞だけです。リンパ節ではT細胞が待ち構えていて、お皿にあるペプチドと一致するレセプターを持ったT細胞だけが活性化され、より特異的な免疫反応が起こるわけです。つまり樹状細胞には病原体の情報をT細胞に伝える役割があると言えます。T細胞に対して病原菌の情報を伝え、その後、キラーT細胞が誘導されるとウイルスの潜む細胞が壊され、B細胞が活性化されると、B細胞から特異的な病原体に反応する抗体が出てくるわけです。このような所で、ストーリーは完結していると思われていました。
“ダーティーシークレット”を解き明かす
この流れで、「小さなペプチドである抗原だけを体に打てば、T細胞を直接刺激する事になるから反応するのではないか」と言われ始めました。しかし実際にやってみると、なぜか上手くいきません。抗原だけあっても、免疫反応は全く起こらないどころか逆に反応が落ちてしまう。これは説明がつかない、まさにミステリーでした。昔から抗体を作る時には抗原性を増張するため油性のアジュバントを入れていました。あるアメリカの学者は抗原だけ打っても上手くいかないのに、汚いアジュバントを入れると免疫反応が起きるのはなぜだ。これはダーティーシークレット(汚い秘密)だと言ったりしました。
じつはこのアジュバントには病原体の死んだ菌の成分が入っているのですが、この意味が長い間わからずにいました。その学者の説としては、死んだ菌が同時に樹状細胞に働きかけていて、抗原を提示するだけでなくもう一つ何かシグナルが入って初めて獲得免疫が起こるのではないかという事でした。
1996年ごろに、僕たちも偶然この研究をしていて、そこからTLRレセプターの発見に繋がってきます。元々この発見が目的ではありませんでしたが、これは大きな出来事でした。
研究を続けたところ、このTLRレセプターが病原体の成分を認識する受容体であるとわかりました。ダーティーシークレットと呼ばれる汚い成分が、TLRレセプターを介して樹状細胞を刺激して補助機能分子を出すわけです。抗原提示は感染がなくても絶えず行なわれていますから、食細胞は常に何かしらの異物を食べています。代謝と言えばわかりやすいかもしれませんが、人間は自分達の身体の組織が死ぬと樹状細胞がそれを食べています。食べて常にペプチドを出している事になりますが、ここで反応してしまうのは人間からすれば誤作動を起こすようなものです。つまり、ちょっとした事で自己免疫疾患が起こってしまいます。これを避けるために、樹状細胞は病原体が来たとわかった時だけはじめてもう一つの補助機能分子を出して、この2つのシグナルをT細胞に伝えた時に初めて獲得免疫が起きる仕組みになっています。
今までは獲得免疫よりも低く見られていた自然免疫でしたが、じつは自然免疫は獲得免疫であるT細胞を支配している、言わば真の指令塔であることがわかってきたわけです。T細胞は、例えるなら中間管理職といったところですね。その後TLRの受容体は10種類くらいあり、この10種類だけであらゆる病原体を認識できていることもわかってきました。T細胞の受容体は、遺伝子構成によって無限の数の抗体を認識できます。しかし自然免疫細胞に関してはたった10数個です。なぜこれだけで病原体を認識できるのかというと、病原体やウイルスにはなくなると致命的とも言える共通に存在する成分があります。自然免疫はこれを認識しているわけです。
TLRは膜型の受容体で、細胞の表面に存在しているものですが、それだけでなく細胞の中にもこのような病原体センサーがあることがわかってきました。RNAウイルスは感染すると細胞質内で中間産物として2本鎖RNAを作り、それに細胞内のセンサーが反応してウイルスが来たと認識します。普通2本鎖RNAはほとんど自分達の身体の細胞質の中に出きません。ウイルスが感染して、それを認識することでウイルスを感知します。DNAウイルスの場合も同様で、感染すると細胞質の中に2本鎖DNAがでてきます。これを認識するセンサーについても数年前にわかってきましたが、この2種類の細胞内センターが活性化されるとインターフェロンが出るわけです。インターフェロンが出ることによって、抗ウイルス反応を引き起こす事がわかってきました。また細菌の成分が細胞内で認識されることや、細胞の表面にいるTLR以外の受容体としてレクチン受容体があることなどもわかってきました。レクチン受容体はカビや結核菌の成分を認識してきます。つまりTLRを含め5つくらいの受容体によって、病原体の侵入を自然免疫細胞が感知している事がわかりました。
ここで面白かったのは、今まで免疫細胞が免疫の中心でしたが、こういったセンサーが人間の身体中のあらゆる細胞にあるとわかったことです。免疫細胞以外の皮膚血管、上皮や筋肉の細胞もそうです。そうなってくると、身体全体が免疫システムであると言えます。病原体が入ってくると体が反応して、サイトカインを出し、そこに白血球やリンパ球を集めたりします。初期の炎症反応(自然免疫反応)だけではなく、獲得免疫への橋渡しのためにTLRが関わってきます。しかし最初に自然免疫の部分でサイトカインが出ることで、獲得免疫に達する前にほとんどの病原体を処理しています。軽い風邪などであれば自然免疫がすぐに対応していますから、獲得免疫は症状が重くなってから出てくるわけです。インフルエンザなどで高熱が出た時などがこの状態です。
人間の身体は絶えず様々な病原体にさらされていますから、症状がほとんど出ないような軽いものに関しては自然免疫が対応してくれています。身体深く、もしくは多量の病原体が入ってくると獲得免疫に情報を伝えてT細胞を活性化、さらにはその病原体の再来に備えて抗体を作り出しているわけです。
昔は抗原だけでピュアなワクチンを作ろうとしていました。週刊誌ではインフルエンザのワクチンは水と変わらない、打っても意味がないなどと言われたりもしていました。少し難しい話ですが、インフルエンザに一度もかかったことのない人には抗原だけを打っても効果は得られません。これは小さな子供などが当てはまりますね。しかし過去にかかったことがあるなら、身体には獲得免疫の抗体がありますからある程度の効果は得られると言えます。どちらにしても抗原のみのワクチンより、アジュバントを加えたワクチンのほうが自然免疫も活性化され、より高い効果が得られると言えます。現在ではワクチンに合成したTLR刺激剤を加えたものを様々な会社が出しています。
マクロファージの多彩な機能を発見する
Q:センターでのご自身の活動についてお願いします。
今は病原体センサーに続いてマクロファージの研究をしています。マクロファージは、細菌やウイルスなどを食べて消化するだけの細胞だと考えられていました。しかし10年ほど前からは、それ以外にも様々な働きをしていることがわかってきました。
マクロファージにはM1とM2の2種類があり、M1マクロファージは食べて消化し、炎症などにも関わるものです。一方でM2マクロファージは火消し役、つまり炎症を抑える働きをしています。この2つのマクロファージにはどのような違いがあるのかを今研究しています。M1が起こした炎症を抑えるために変化したものがM2であるという説もありますが、僕達は元から別の細胞であると考えています。
アレルギーに関わるM2マクロファージを、私たちはノックアウトを作って研究していました。ある遺伝子がないマクロファージは寄生虫感染の時に誘導されてくるM2マクロファージ、つまりアレルギー反応に関わるマクロファージが出てこないのですが、そのマウスにはM1マクロファージがあります。
その後僕らが見つけたのは、ある一つの遺伝子をなくすと身体の中に常に存在するM2に似ているマクロファージがあって、これを組織常在マクロファージと呼んでいるのですが、このマクロファージがなくなることがわかりました。身体が小さく脂肪組織がほとんどなくなっていて痩せたマウスになりました。
しかしこのマウスは、不思議なことに痩せているのに糖尿病になったり、メタボになってしまうのです。このマウスを調べてみると、マクロファージがないことにより、脂肪細胞の代謝がおかしくなっていることに気づきました。正常な組織はマクロファージがいることで、脂肪の状態が保たれている。なくなると脂肪の代謝がおかしくなって脂肪酸が過剰に出てしまい、メタボになってしまうわけです。ですから、脂肪組織に常在するM2様マクロファージが、脂肪細胞が正常な機能を維持するために必要なものであるとわかりました。
マクロファージは組織の中にあるものを指し、組織内に入る前の血液中にある段階ではモノサイトと呼ばれています。モノサイトは単球とも言いますが、ある一つの単球を調べているうちに肺の線維症と関わりがあることに気づきました。マウスで実験したところ、これがないと肺の線維症が全く起こりませんでした。逆にこの単球が肺にあると線維症が起こってしまうのです。このようにマクロファージサブセットごとに違う機能があるのではないかと今考えています。例えばがんに関わるものや傷を治すものなどです。
がんの場合は2つあって、がんをやっつけるものとがんを手助けするものがあるとわかっています。つまりマクロファージは様々な部分で生命機能に重要な役割を果たしているとわかってきているのです。その一部に感染した菌などを食べて消化する役割があり、マクロファージにはものすごく多彩な機能があると言えます。このようなマクロファージを分類できるようにしたいと研究を進めています。
クリスパーシステムで研究スピードが迅速化
Q:進歩の早い研究分野ですが、感じている課題はありますか?
技術はものすごく進んでいると思っています。かつては1つのノックアウトを作るのに2年ほどかかっていましたが、今はクリスパーシステムを使って数ヶ月でできるようになりました。費用も、かなり抑えられています。技術革新によって、研究が早く進むようになったと感じています。
遺伝子の機能を知るためには、ノックアウトマウスを作らなければなりませんが、その時間がものすごくかかっていました。作製には2年かかり、その後学生が3年くらいかけて、トータル4~5年かけて博士号を取るために一つのマウスを解析していました。これが今ではテクニシャンのレベルになっていて、ノックアウトをどんどん作ってフェノタイプのスクリーニングをかけている状況です。
大手製薬会社との産学連携を推進
Q:企業に対して思うことはありますか?
企業に関しては今年から中外製薬や大塚製薬との産学連携を始めました。日本初の新しい形、産学共創と呼んでいます。これまでは基礎研究からできた成果を応用に持っていく方法でしたが、そういった時代ではなくなってきています。
日本は研究そのものについては良くても、その成果は出ていないと言われています。外国に全部取られてしまっていると言えます。それを避けるためでもありますが、もう一つは文科省など国が産学連携をものすごく進めていて、その中で僕らはたまたまWPIプログラムが終了した時点で次の10年をどうするかを考えていました。その時にちょうど中外との連携をすることになり、10年間サポートしてもらえることが決まりました。これによってWPIのプログラムも延長できたわけです。その条件は今までどおりに基礎研究を続けることと、その成果を最初に中外に開示することでした。
そこで中外製薬が興味を示すものに対して、共同研究の契約を結びます。昔は共同研究となると自分たちの基礎研究を辞めなければなりませんでした。しかしこれからは中外から10名ほど派遣の人が来て常駐してやっていきますから、自分たちの研究を続けたままでいいわけです。自分たちの研究をいつも通りやって、なおかつ中外との間では基礎研究のレベルからディスカッションが始まります。中外も自分たちの研究は自分たちでやりますから、お互いに負担が少なくなります。双方が合体した感じで基礎研究を進め、論文にも中外の名前が入ることになりますからまさに共創と言えますね。大塚はセカンドルック、二番目のパートナーという形でやっていきます。
Q:ご自身の経験から、若い学生や研究者に対して思うことはありますか?
まず僕自身の話をすると、大学の頃から免疫学が出始め、僕自身も興味を持ち始めていました。70年代の半ば頃は石坂公成先生のIgEの発見がよくマスコミに取り上げられていました。その後T細胞やB細胞、組織適合抗原が出てきた頃、免疫学を学ぶために大阪大学の岸本忠三先生のもとに入りました。
ちょうどその頃に免疫学の分野が流行り始めましたが、まだほとんど何もわからないような時期でした。そんな時に僕が岸本先生のところへ行くと、分子生物学を習えと言われ本庶佑先生のところへ行くことになりました。自分としては免疫学がやりたかったのですが、そうではなく分子生物学を習うことになってしまったわけです。
人によっては自分のやりたい研究しかしませんと言う人もいますが、この時先生の言ったことに従ったのは今となっては良いことだったと思っています。どの分野がこれからどんな風に伸びていくかは学生ではなかなかわからないことですが、やはり専門家である先生には先が見えていたのだと思います。
今ではTLRをやりたいと言ってここに来る学生もいますが、どんどん新しい事をしていくのが僕らのラボだからTLRばかりできないよとお話ししています。実際にテーマは数年おきに変わっています。僕らもノックアウトを中心に研究していますから、分子に執着がありません。免疫の分野の中で、広く様々なことをやっていきたいと思っています。
さて、昨今の学生を見ると、僕達の時代よりも研究志向の学生が減ってきている気がします。やはり研究は3Kと言いますか、きつい、暗いイメージがあるのかもしれません。おまけに就職のことを考えると、皆さん躊躇してしまうようです。
国際的に見ても中国などは盛んになってきていますが、日本はそれに比べて論文の質や数もやや落ち気味かもしれません。
向き不向きはあるものの、やはり研究は面白いものです。実際にやってみたらものすごい才能を発揮できるかもしれません。しかし色々チャレンジしてやめてを繰り返すと、社会的には落ち着いていないと思われがちです。そう考えると一度この分野にチャレンジしてみて、もし向いていなかったとしても別のルートが確保できるようなシステムがあればいいなといつも思っています。
僕ももともと医者をやりながら研究をしていましたし、最初の頃はまさか自分が基礎研究をここまで続けるとは思っていませんでした。研究を続けているうちに面白くなってハマってしまい、医者をやめました。やはり自分が好きなことだからこそ、今も続けているのだと思います。好きなことをやっていて、それを職業と言えるのは嬉しいですね。(了)
審良 静男
あきら・しずお
大阪大学免疫学フロンティア研究センター 拠点長
1984年、大阪大学大学院医学研究科修了、医学博士学位取得。 市立堺病院 内科医を経て、大阪大学細胞工学センター免疫研究部門 日本学術振興会奨励研究員。1985年、米国カリフォルニア大学バークレー校免疫学部(坂野仁教授)博士研究員。1987年、大阪大学細胞工学センター免疫研究部門(岸本忠三教授)助手。1995年、大阪大学細胞生体工学センター多細胞生体系研究部門 助教授となり、1996年より兵庫医科大学生化学講座教授。1999年より大阪大学微生物病研究所癌抑制遺伝子研究分野 教授。
2005年より、大阪大学微生物病研究所生体防御研究部門自然免疫学分野 教授。また2007年より現在まで、大阪大学WPI免疫学フロンティア研究センター 拠点長。
また、2011年から2012年まで独立行政法人理化学研究所 生命システム研究センター 客員主管研究員。
2011年から現在まで、兵庫医科大学 名誉教授。2012年から2013年まで、独立行政法人理化学研究所 横浜研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センター 特別顧問(非常勤)。
2013年から2014年まで、独立行政法人理化学研究所 統合生命医科学研究センター 特別顧問(非常勤)。2013年から2016年まで、大阪大学 特別教授。2014年から2017年まで、独立行政法人理化学研究所 統合生命医科学研究センター 特別顧問(非常勤)