成人男性の5 人に1 人が抱える高尿酸血症。多くの現代人が恐れる痛風につながる生活習慣病だが、その環境要因の解明にはまだ至っていない。その研究に不可欠な実験用マウスの作成に取り組むのは帝京大学薬学部の細山田教授だ。尿酸代謝が人間と大きく異なるマウスをどのようにしてヒトと同じ条件に近づけるのか。長年の研究を結実させ
て新たな遺伝子疾患をもつマウスを作成し続ける細山田教授にお話を伺った。
マウスで高尿酸血症研究の前進
Q: 現在のご研究内容について教えてください。
高尿酸血症という病気があります。そのメカニズムを明らかにするために実験動物を用いた研究を行なっています。より明確には、その専用のマウスを作成することが私の研究内容です。
研究の材料としてのマウスは、普通の実験用のマウスではいけません。尿酸が増える原因のひとつは、ビールの成分としてよく話題になるプリン体の摂取であり、尿酸が上がると高尿酸血症という病気になります。そしてそれが長年続くと、痛風になってしまうのです。成人男性の約5 人に1 人が高尿酸血症だと言われています。
それで皆さん、「低プリン体」とか「プリン体カット」といったうたい文句のビールを飲むのですね。しかし尿酸は、マウスなどの動物では体内で分解されてしまいます。人間と、ゴリラやチンパンジー、テナガザルなどの高等霊長類は尿酸値が高いのですが、同じサルでもニホンザルやマーモセットなどでは分解されてしまうので尿酸値が低いのです。人へと進化する中で尿酸が分解されなくなったのですね。そのため、マウスを使って尿酸を上げる実験ができないことが問題でした。
ところが遺伝子工学によって、尿酸を分解する酵素の遺伝子を潰す手法を用いることで、特殊なマウスを作り出すことができるようになってきました。私はそうしたマウスを使った実験を行なっているのです。尿酸分解酵素はウリカーゼと呼ばれています。そのウリカーゼを欠損させたマウスを購入して実験を行なっているのですが、どうもそれだけでは人の条件に近づきません。尿酸は尿中に排泄されるのですが、ウリカーゼを欠損させたマウスの場合、その尿酸の量が人の約25 倍から30 倍にもなります。
ようするに、普通に飼っていると腎臓に石ができてマウスが死んでしまうのです。そうした問題点があるため、現在は痛風の薬をマウスに使いながら実験、研究を行なっています。いわゆる品種改良のような方法で、最終的には薬を使わずに実験、研究ができるマウスを作り出すことが目標です。つまり遺伝子を変えることによって、人と同じような尿酸の代謝を示し、尿中の尿酸の排泄量が30分の1くらいまで減ったマウスを作りたいと考えています。そうなればようやく、人がなぜ高尿酸血症になるのかが解明できるでしょう。
Q: 現在は高尿酸血症になるメカニズムはあまり解明されていないのでしょうか。
遺伝要因と環境要因の二つがあるのですが、そのうちの高尿酸血症の遺伝要因はかなり解ってきています。環境要因もなんとなくは解っていますが、それは厳密に検討することが難しいのです。もちろん人を使って実験をすれば環境要因も分析できるでしょう。しかし人にはそれぞれに個体差があります。
例えば、同じ量のビールを飲んでも尿酸値が上がる人と上がらない人がいるのです。そのため、例えば双子をたくさん集めて実験をすれば、個体差の少ないデータが得られるでしょうが、現実的には遺伝的に均一な実験環境を人で作り出すことが難しいので、なかなか明確なデータを出せないのです。
一方マウスだと、遺伝的に均一な兄弟ばかりを揃えることで、容易にそういった実験環境を作ることができます。例えば何を食べたら尿酸の数値が上がるか、お酒を飲んだら本当に数値が上がるのかといったことが、マウスを用いることによって明らかになる可能性があります。しかしまだその環境要因が明確になっていないので、日本痛風・核酸代謝学会の中にも「お酒やビールを飲んでも尿酸は上がらない」と主張される方もいるのです。そういう意味で、高尿酸血症についてまだはっきりと解っていない部分はあります。
Q: マウスがもっている尿酸分解酵素を人間に入れて高尿酸血症を防ぐことはできないのでしょうか。
それは「ラスブリケース」と呼ばれる薬になっています。例えば白血病治療を行なう際にもこの薬が使われています。というのも、白血病治療を行なうと白血病の細胞が壊れるのです。DNA を分解すると尿酸ができてしまうので、白血病のために抗がん剤治療をして一気に白血病細胞を壊すと、尿酸がたくさん出てきて、それが石になり腎臓が悪くなってしまうのです。それを防ぐために、ラスブリケースを投与して尿酸を減らす処置が実際に行なわれています。
Q: 現在のご研究は治療法よりも根本的な部分に目を向けているのですね。
お伝えした通り、成人男性の約5人に1 人は高尿酸血症といった状況であり、それに対する治療薬は優れたものがすでにありますが、私の研究を続けていけば作用機序の異なる別の種類の治療薬の開発に繋がるかもしれません。そして、私がなぜこの研究を行なっているのかというと、もともと腎臓の研究をはじめていたためです。腎臓が悪くなるときに尿酸値が高くなることから、そのメカニズムを調べたいと考えていました。例えば腎臓が悪くなる初期の段階で尿酸値の上昇を抑えると、病気の進行を抑えられるのではないか、など。そうしたことを検討してみたいと思ってはじめた研究でした。
Q: マウスの改良がメインの研究でしょうか?
そうですね。遺伝子組み換え動物の一つとして遺伝子組み換えマウスを作成して、そのマウス同士を掛け合わせる研究を行なっています。それによって人間に近い条件をもつマウスを作成しようとしている途中です。遺伝子組み換えマウスには、具体的には遺伝子を欠損させるマウスと遺伝子を入れるマウスの二通りの方法があります。遺伝子を入れるマウスの場合は、遺伝子の断片を受精卵に入れるのです。
そうすると、遺伝子の断片がある確率で染色体の中に入ります。遺伝子の中では、DNA の配列に従ってメッセンジャーRNA ができ、タンパクができて、そのタンパクが働く仕組みになっているのです。だからそのタンパクができるように遺伝子を設計しておけば、狙ったタンパクを持つマウスが作れるのです。先述のウリカーゼは人にはないので、マウスのウリカーゼ遺伝子を欠損させたい。そのためには単純に遺伝子を他のもので置き換えてやることができます。
そのときに使うのが、有名なES 細胞です。ES 細胞の中に遺伝子の断片を入れる際に、欠損させたい遺伝子と同じ配列のものを入れると、ある確率で組み換えが起きるのです。そのような組み換えが起きたものを選び、そのES 細胞を受精卵に入れてやると、細胞を取り込んで新しいマウスになります。
それが最終的に、マウスの精子や卵子の中に入ると、次の代からは全て遺伝子の欠損したマウスであるノックアウトマウスが生まれるのです。私たちのラボでは遺伝子組み換え自体を行なっているわけではないので、組み替えてもらったマウスを外部から購入なり依頼するなりして入手しています。それらを掛け合わせてほしいマウスを作成する作業を行なっているのです。
各モデルマウスを掛け合わせ、病態を解明
Q: 最新のマウスは理想とする状態にどのくらい近づいていますか?
そもそもまず、三つの遺伝子を変化させることが不可欠です。一つはウリカーゼ。もう一つはHPRT( ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ) と呼ばれる遺伝子です。それからもう一つは、XDH( キサンチンデヒドロゲナーゼ) と呼ばれるものです。込み入った話ですが、ヒポキサンチンと呼ばれる物質が、キサンチン、尿酸と変化していきます。そのあと、マウスの場合にはアラントインに変わるのです。尿酸からアラントインに変化するときにウリカーゼが作用しています。一方、ヒポキサンチンからキサンチンへと変化するときにXDH が作用します。
また、逆にヒポキサンチンから原料の方へ戻る変化もあります。そこで作用するのがHPRT です。マウスの場合はウリカーゼが高く、HPRT が低く、XDH が高いので、人間とは異なります。そこで現在行なっている研究では、はじめにウリカーゼをつぶして、アラントインに変化せず尿酸のままでとどまるようにしました。そのあとHPRT を高くするための作業を行なったのです。けれども、結果的に目立った変化はありませんでした。問題はXDH が強すぎたことです。
そこでXDH を抑えるためにアロプリノールやフェブキソスタットといった薬を使います。このフェブキソスタットは近年新しく開発されました。アロプリノールは1960 年代くらいから使われていましたので、フェブキソスタットは40 年ぶりくらいに出た新薬だったのです。これらの薬を使ってXDH を抑えています。ただ、新しい方のフェブキソスタットは値段が高いので、安いアロプリノールを使って実験をしています。アロプリノールを使うとXDH が抑えられるので、腎臓に尿酸が溜まりにくくなり、マウスを長く生かすことができるのです。ウリカーゼをノックアウトしてしまうと、アロプリノールを使わなければ生後2 週間程度で死んでしまいます。そこで、アロプリノールを投与すると、それが母乳に入り、生後2 週間の子どものマウスにも効くのです。そのようにして実験を行なっています。
Q: その課程でも試行錯誤があるのですか?
いえ、このようにアロプリノールが作用することは既に論文などで発表されている事実です。その上で、どのくらい使用すればいいかを検討しました。現在はマウスを改良しては増やす繰り返しです。具体的には、マウスを育てて、どのような遺伝子が入っているかを読み取り、良い遺伝子の組み合わせを探りながら、望ましい組み合わせをもつマウスを選んでいるのです。個体の情報は一覧にして管理しています。一匹一匹がもつ遺伝子が異なることもあるのです。
Q: 目の前にある課題は何でしょうか?
先述した3 種類の数値を人に近づけたマウスを作成することです。まだその途上です。というのも、マウスを一世代繁殖させるのに3 ヶ月程かかるため、一つの検証に1 〜2 年を要します。現在はHPRT を増やしたところまで進んでいますが、そのマウスを別のマウスと組み合わせて、その実験の結果を見るまでには4 年くらいかかりました。長い目で見て研究を進めていかなくてはいけないのです。HPRT をもつマウスを掛け合わす実験は終了したので、今度はこれまで高すぎたXDH をノックアウトしたマウスと掛け合わせている段階です。
Q:XDH が全くない場合には問題なのでしょうか。
人の場合、XDH が全くないと「キサンチン尿症」と呼ばれる病気だと診断されます。しかし病気とはいっても症状は全くありません。ただ尿酸がないだけです。一方でマウスの場合、XDH をノックアウトしたマウスはやはり死んでしまいます。その原因は、先述したように本来はマウスの方が人に比べ尿酸・プリン体の排泄が約25倍も多いのですから、キサンチンが多すぎて腎臓を悪くしてしまうのです。
そのため、プリン体を減らすことを考えました。それで、去年の7 月からXDH も欠損させたマウスの作成をスタートしました。それが最新の研究です。まだうまくいくかわかりませんが、生まれたマウスをきちんと調べていけば解ることがあると思います。最近もう一つの研究が学会で受賞しました。人の場合、URAT1 という遺伝子を欠損させると腎性低尿酸血症と呼ばれる、尿酸値が低い症状が起こります。尿酸値が低い分にはそれほど問題がないのですが、この症状をもつ人は運動をすると急性腎不全を起こすのです。そのメカニズムも探っていかなければなりません。
そのための実験用マウスを作ったことで、その学会賞を受賞したのです。色々な研究成果が、一言でいうと、尿酸に関した遺伝性疾患のマウスを作っていこうとしています。その上で、目指しているのは健康な人のモデルとなるようなマウスを作成することです。そんなマウスは本来いないわけなのです。
しかし健康な人そのものをモデルマウスとして作成し、さらに病気のマウスと掛け合わせることで、なぜその病気にかかるのかが検証できるようになります。例えば、運動をすることでなぜ腎不全が起こるのかといったメカニズムを調べることが可能になるのです。
Q: スタンダードなモデルを作ろうとされているのですね。
そうですね。「標準」のマウスを作りたいのです。マウスにとっては健康ではないかもしれませんが、正常なヒトの値をもつマウスが必要です。それと平行して、腎性低尿酸血症や家族性若年性高尿酸血症性腎症などの色々な病気をもつマウスの作成にも取り組んでいます。家族性若年性高尿酸血症性腎症は稀な病気なのですが、ウロモジュリンと呼ばれる遺伝子の変異によって起こります。
そもそもウロモジュリンは、尿酸とは全く関係がないと考えられてきました。それなのになぜ、全く無関係のはずのウロモジュリンがこのように尿酸に関連する病気を引き起こすのだろうと疑問に感じ、とりあえずそのモデルのマウスを作ってみたのです。ただマウスは尿酸が高くならないので、尿酸値は元のままで変わりません。しかし結局URAT1 と呼ばれるトランスポーターが増えることは示せました。そこから先はまだ示せていませんが、要するにウロモジュリン遺伝子を変異させたマウスとウリカーゼをノックアウトしたマウスを掛け合わせれば、尿酸値がなぜ上がるのかのメカニズムが明らかになるだろうと道筋が立ったのです。
ですから他の疾患、特にプリン体代謝・尿酸代謝以外の点においては、人とマウスにそれほど大きな違いはありません。そうした疾患に関する検証は、普通のマウスを使ってできるでしょう。けれどもプリン体代謝・尿酸代謝に関しては人とマウスは本当にかけ離れているのです。だからまずはその乖離を埋めてみないことには、研究はなかなか進みません。
研究への熱意を燃やし続け、難題に挑む
Q: プリン体・尿酸代謝は唯一ブラックボックスのような部分なのですね。
というよりも、これまで誰も取り組もうとしてこなかった分野だったのです。マウスでは無理だと考えられてきましたから。しかしそこを避けていると、既に作成したマウスと掛け合わせる実験が進まないため、あえてその分野に入っていくことになりました。URAT1 ノックアウトマウスを作成したのは2000 年代だったので、5 年ほど時間がかかりましたが、作成すること自体はそれほど大変ではありませんでした。
ただ問題は、人の場合URAT1 が低いと低尿酸血症になるはずですが、マウスではそうはならなかったことです。マウスは尿酸を分解してしまうので、もともと低尿酸ですから。そこでウリカーゼをノックアウトしたマウスと掛け合わせることで、マウスでも低尿酸血症が起こることを示すことができました。
Q: なぜ、尿酸に関する実験用マウスの作成という難しい分野を選択されたのですか?
トランスポーターと呼ばれるURAT1 を発見したのが、私がもともと所属していたラボだったのです。普通はそのように遺伝子に着目すると、そのノックアウトマウスを作ります。そのため我々もURAT1 のノックアウトマウスの作成に取りかかったのですが、それに10 年くらいの時間を要しましたね。そして結局何の変化も起こりませんでした。
そこで先述の3 つの遺伝子を変化させないと違いが見えないだろうと仮定し、まずはウリカーゼをつぶしてみたのです。そのようにしてURAT1 とウリカーゼのダブルノックアウトマウスを作成したら、やっと違いが見えるようになりました。だから要は、自分が最初に取り組んだ研究にこだわってきたら、それがこの分野だったのです。「これをノックアウトしたらこちらもノックアウトしなければならない。そしてこれも、あれも……」と現在まで続けてきました。つまり、一つだけクリアすればそれで終わりではなかったことが判明し、次々に取り組んできたのです。
逆にいうと、それだけ追いつきにくい分野でもあります。他所の研究所が同じようにノックアウトマウスを作成して、それを掛け合わせてと繰り返していると、我々が辿ってきたのと同じくらいの時間がかかるでしょう。そのため、現在先行している分だけ、有利なのだと考えられます。世界にもこの研究をしている人はいないようなので、唯一の研究なのです。
Q: 医学部のご出身で、現在は薬学部に在籍していらっしゃいますが、転換の理由は何でしょうか?
単に誘われたからです。もともと私が東大で師事していた先生が私大の杏林大学に教授として移ったので、それに伴って杏林大学で働くこととなりました。その杏林大学では共立薬科大学の学生さんを受入れていたのですが、そこの先生から「来ないか」と声をかけられたのがきっかけです。
薬学部では6 年生の授業において、医学的な知識を教える必要があります。私が着任したのも、そういった薬学部の中の医学的な内容を扱う薬物治療学の研究室でした。もともと薬理学の研究室に所属していたので、話す内容も医学部と薬学部で大きな差はありませんでした。
Q: なぜ腎臓や尿酸の研究を志したのでしょうか。
大学に入学したのが、ちょうど「分子生物学」の言葉が広まり出した時代で、私もブルーバックスなどの本を読んで興味をもっていました。それにもともと薬学部に行こうと思っていたので、入ったのも東大の理科2 類だったのです。
しかし東大には入ってから進学振り分けがあり、「薬の研究がしたい」と話したら、シオノギの研究所に務めていた親戚から「薬学部よりも医学部の方が適しているのでは」と言われました。そして進学振り分けの基準となる点数も医学部の条件を満たしていたので、医学部へ進級することにしたのです。医学部を卒業してから10 年間くらいは医者としても働きました。しかしその途中から、もっと研究に割く時間が必要になってきたため、以後研究だけに集中しています。
Q: 人間を対象とする臨床と、マウスの作成を行なう研究では、関連する内容は少ないのでしょうか。
遺伝子の観点から生物学的には、マウスも人も変わりないと私は考えています。研修医として勤めていて少し感じたことは、臨床で行なうのは診療なので、つまり「できることしか行なえない」ことでした。薬は決められたものを使い、もちろん研究目的の医療はできません。それだと病気がなかなか治らなくてもどかしさがありました。私は実は学生時代から実験を行なってきたので、研修医をする中で「やはり研究をしなければだめだ」と感じたのです。しかし体力的に研修医と研究を両立することは厳しかったので、臨床をやめて研究に戻りました。
研究テーマの尽きない医薬分野で、「もの」を生み出す強い研究を
Q: 研究において、最も大事にしている信条は何でしょうか?
よく言われることは、研究には情報を出す研究とものを作る研究の二通りがあります。ものを作る研究の方が、目に見える成果があるので分かりやすいですし、強いのです。ですから基本的にものを作る研究を目指していきたいと考えています。マウスを作ることでも、「このようなマウスができました」とお見せすることができます。
もちろんその中で、「こんな面白い現象が起こる」といった情報も出てくるとは思いますが、現象のみになってしまうと、結局後生の人が再現しようとしたら全く関係ないことが起こるとも限りません。ある反応が起こったときに、「何かある分子の働きによって反応が起こったが、その分子が何かは分からない」というよりも、「この分子にこちらの薬を使うと、このようなシグナル伝達が起こり、その反応が起こる」と説明できたほうが、説得力が強いですよね。そういう意味では、単に結果や情報を説明するだけよりも、目に見える形でものを提示できる研究をしようと考えています。
Q: 成人男性の5 人に1 人もの割合で痛風のリスクがある状況なので、この研究によって救われる人は多いのではないかと思いますが、一緒に開発などを行なう企業や政府に期待することはありますか?
確かに、私自身企業からお金をいただいて行っている研究もあり、高尿酸血症に関する共同開発は積極的に受け入れたいです。むしろ、日本痛風・核酸代謝学会あるいは痛風財団への協賛を通じて、痛風や高尿酸血症の研究の発展にご協力いただける企業を切望しております。痛風や高尿酸血症は生活習慣病ですので、医薬だけではなく、食品や醸造など幅広い分野からご支援いただきたいと思います。政府からは科研費が出ていますから、それを獲得するために申請をして毎回獲得しています。現状、科研費は研究遂行のために非常に有効であると感じますし、この状態を維持してほしいと望んでいます。
Q: 大学で研究されていて、学生さんとも接点が多いと思いますが、今後の研究者や研究に携わる学生さんにはどのようなことを期待しますか?
よく「もう研究することはないのではないか」と思われるのです。つまり、すでに色々なことが分かっているので、これ以上研究することもないのではないかと言われるのですが、そんなことはありません。特にこの分野では、一つの新しい事実が分かると、さらに研究しなければいけない内容が一気に増えます。決して研究テーマが枯渇してしまうようなことはありません。医学・薬学研究の領域においては、病気がある限りより良い治療を追い求め続けるでしょう。だから研究すればするほど広がっていくので、学生にも「もう自分ができることはないだろう」と思う必要はないことを伝えたいですね。
Q: 今後の研究におけるゴールを教えてください。
やはりプリン体・尿酸代謝を研究する上では、従来の実験用マウスではなく、今回作っているようなマウスが必要になります。そしてそのようなマウスができたら、色んな研究者の実験に使ってほしいと思います。ものづくりの研究として作ったものは使ってもらってこそ意義がありますから、必要な人のもとに届き、役立ててもらいたいですね。(了)
細山田 真
ほそやまだ・まこと
1990 年東京大学医学部医学科を卒業。1996 年に東京大学大学院医学系研究科にて博士(医学)を修了し、尿酸代謝・尿酸トランスポーターを専門に研究を行なう。日本痛風・核酸代謝学会の理事であるとともに、日本薬理学会、日本腎臓学会などで幅広い学会活動を展開するかたわら、2011 年より帝京大学薬学部教授を務める。