「刃物を磨く」ことは奥が深く、一般的には表面に光沢が出た状態を磨いた状態とされているが、真に刃物を磨くためには表面だけではなく「内側」の原子の配列を整えることが重要である。この、内側までが整然と並んだ状態を「超平坦」という独自の用語で定義し、刃物の新たな研磨方法を開発しているのが、名古屋工業大学の江龍修教授だ。江龍教授の技術は、従来磨くのが困難とされていたシリコンカーバイドに実用化され、重電分野のデバイスなどに広く活用されている。「刃物には無限の可能性がある」とし、今後は食物や医療など多分野への展開を視野に入れている江龍教授に話を伺った。 内側の電子配列を整える「超平坦」技術 Q:まずは研究の社会的なニーズについて教えてください。 磨いたものというのは「ピカピカになる」といいますが、そもそもピカピカとは何か、ということを考えてほしいのです。ピカピカと … [もっと読む...] about 超平坦技術で、刃物の新たな可能性を実現する〜江龍修・名古屋工業大学教授
Nano Technology/Materials
熱電変換の研究で、熱エネルギーの有効利用を実現する~野村政宏・東京大学生産技術研究所准教授
エネルギーの有効利用が社会で求められるなか、近年再度注目を集めているのが「熱」エネルギーである。従来、熱エネルギーはコントロールが難しい面があったが、近年この熱エネルギーをナノテク領域からアプローチすることで、新たな発見と技術が生み出されつつある。こうした中、「フォノンエンジニアリング」と「エネルギーハーベスティング」といったキーワードを軸に研究を進めているのが、東京大学生産技術研究所の野村 政宏 … [もっと読む...] about 熱電変換の研究で、熱エネルギーの有効利用を実現する~野村政宏・東京大学生産技術研究所准教授
GaN結晶の量産技術を確立し、多方面での実用化を推進する〜森勇介・大阪大学教授
窒化ガリウム(GaN)は青色LEDに用いられるなど、現代の社会や産業において必要不可欠な半導体物質である。主流であるシリコンと比べて電気の変換性能が高いという特性から、電気部品としてさまざまな方面で活躍が期待されているものの、その低コスト化やウエハサイズの大口径化に難しい面があった。こうしたなか、その難問を解決するのが大阪大学工学研究科 電気電子情報工学専攻の森 … [もっと読む...] about GaN結晶の量産技術を確立し、多方面での実用化を推進する〜森勇介・大阪大学教授
ナノマシンの開発で、ドラッグデリバリーシステムの実用性を高める〜宮田完二郎・東京大学准教授
近年、がん治療などで注目を集めている技術「ドラッグデリバリーシステム」においては、さらなる成果のため、より正確な開発が求められている。そこで有効なのが、生体高分子を用いてサイズをコントロールした「ナノマシン」だ。ナノマシンにさまざまな機能を搭載することで、これまで入れなかった血管や細胞に薬を届けることができるなど、従来以上の治療を可能にすることができる。こうしたナノマシンを研究しているのが、東京大学大学院大学院 工学系研究科 … [もっと読む...] about ナノマシンの開発で、ドラッグデリバリーシステムの実用性を高める〜宮田完二郎・東京大学准教授
高圧力装置で、地球内部の層構造を解き明かす〜廣瀬 敬・東京大学教授
地球の内部については、まだまだ未解明な部分が多く残されている。地球内部を掘削することで直接見るのではなく、研究室の環境で地球内部と同様の環境を再現することで、そこで起こる物質の変化=相転移を再現する実験が一般的である。そんななか、地球内部の圧力を再現するために世界最高レベルの高圧・高熱を実現し世界中から注目を集めているのが、東京大学大学院 理学系研究科 … [もっと読む...] about 高圧力装置で、地球内部の層構造を解き明かす〜廣瀬 敬・東京大学教授
独自のエレクトロクロミック材料で、次世代の表示デバイスを実現する〜樋口昌芳・物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点電子機能高分子グループ グループリーダー
電気化学的酸化還元により色が変わる「エレクトロミック材料」が、最近、脚光を浴びている。日差しをさえぎる調光ガラス窓や、車の防眩ミラーの材料として、時代のニーズをつかみはじめているのがその背景だ。こうしたなか、有機と金属のハイブリッドポリマーで独自のエレクトロクロミック材料を開発したのが、物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点 電子機能高分子グループ … [もっと読む...] about 独自のエレクトロクロミック材料で、次世代の表示デバイスを実現する〜樋口昌芳・物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点電子機能高分子グループ グループリーダー
汎用金属触媒の開発で、医薬品候補分子の実用化を推進する〜松永茂樹・北海道大学 教授
医薬品合成においては触媒の利用が一般的であるが、従来多く使われてきたのはロジウムやパラジウムなどのレアメタル触媒だ。レアメタル触媒は優れた触媒性能を持つものの、希少で高価な点が課題とされており、豊富で安価な金属触媒の開発が求められている。こうしたなか、汎用金属を用いた触媒の創製を通じて、医薬品の生産に応用可能な有用化合物の効率的合成法の開発に取り組んでいるのが、北海道大学 大学院薬学研究院 … [もっと読む...] about 汎用金属触媒の開発で、医薬品候補分子の実用化を推進する〜松永茂樹・北海道大学 教授
高効率・高密度な光伝送の仕組みを開発する〜岩本 敏・東京大学生産技術研究所 准教授
サーバなどの情報機器の中でも光による情報伝送のニーズが高まる中、高効率な光制御の技術が求められている。そこで注目されているのが、フォトニック結晶だ。フォトニック結晶とは光の波長程度の屈折率周期構造をもつ人工光学材料であるが、フォトニック結晶を利用することで従来の材料では困難であった光制御技術や光学現象の実現ができると期待されている。さらに最近では物性物理の分野で発展しているトポロジーという考え方をフォトニック結晶研究に取り入れることで、新たな可能性が見え始めている。この新たな展開に挑んでいるのが、東京大学生産技術研究所の岩本 敏 … [もっと読む...] about 高効率・高密度な光伝送の仕組みを開発する〜岩本 敏・東京大学生産技術研究所 准教授
有機化学的手法で、原子レベルのイメージングを実現する〜岡本晃充・東京大学 先端科学技術研究センター 教授
人間の体で起こるさまざまな変化の要因を探るには、体を構成する分子や原子がどのように組み上がっているのかを明らかにしなければならない。そのうち核酸・タンパク質といった生体高分子からひとつの構成単位だけを選択的に認識し可視化するには「有機化学的手法」が有効である。こうした、原子単位で物質を扱う有機化学の考え方を生物学・遺伝学の分野へ積極的に導入しているのが、東京大学先端科学技術研究センター 岡本晃充教授だ。今回は岡本教授に、研究アプローチの有効性や、研究室が独自に開発したDNA … [もっと読む...] about 有機化学的手法で、原子レベルのイメージングを実現する〜岡本晃充・東京大学 先端科学技術研究センター 教授
原子間力顕微鏡で、原子レベルの作用を明らかにする〜福間 剛士・金沢大学ナノ生命科学研究所 所長
ハードディスクやディスプレイなど、ナノスケールの技術は表面や界面を制御するために世の中で幅広く使われ、開発も盛んだ。しかしながらその原子構造を正確に「観る」技術は実はなく、想像に頼った開発が行なわれているのが実情だ。そこで有効になるのが、「原子間力顕微鏡」(AFM)と呼ばれる、原子や分子のレベルまで観ることができる顕微鏡だ。物質の作用を原子レベルで正確に観ることによって、正確無比な開発が可能になることが期待されている。今回は世界有数の原子間力顕微鏡を持ち、文部科学省からのWPI採択も受けた金沢大学ナノ生命科学研究所の福間 … [もっと読む...] about 原子間力顕微鏡で、原子レベルの作用を明らかにする〜福間 剛士・金沢大学ナノ生命科学研究所 所長