生活習慣病の発症に重要な炎症は、血管と組織の境界部分にしばしば認められる。一方で、従来の観察手法ではアプローチが困難という課題があった。そのような中で、光を用いた独自の生体イメージング手法を開発し可視化を行ない、実態の解明及び新規治療法の開発を目指しているのが、自治医科大学分子病態治療研究センター分子病態研究部の西村智教授だ。現場に即した生体イメージング技術を重視し、自らも機器を開発する西村教授に、医学部としては珍しい研究手法について伺った。 現場での撮影課題を解決する Q: … [もっと読む...] about 現場ニーズに即し、生体イメージング技術を自らの手で生み出す~西村 智・自治医科大学教授
微小管の研究で、細胞分裂の特性を明らかにする~佐藤 政充・早稲田大学先進理工学部教授
不妊や流産、がんの原因を解明する研究において、細胞分裂時の異常が原因の一つに挙げられる。細胞分裂時、遺伝情報を伝えるために染色体を正確に2個の細胞に分配する役割を持っているものを「微小管」と呼ぶが、この微小管の異常が不妊や流産、がんに関係しているとされている。こうしたなか、微小管研究に正面から取り組み、医療への応用も視野に入れているのが、早稲田大学 先進理工学部 生命医科学科の佐藤政充教授だ。今回は佐藤教授に、微小管研究の基本と応用について伺った。 細胞内で重要な役割をはたす微小管 Q: … [もっと読む...] about 微小管の研究で、細胞分裂の特性を明らかにする~佐藤 政充・早稲田大学先進理工学部教授
自然言語処理の技術で、医療現場の課題を解決する〜荒牧英治・奈良先端科学技術大学院大学特任准教授
「病院での診断をできるだけ自動化したい」と、医療分野におけるAIの活用が望まれている。こうしたなか、自然言語処理の技術を用いて認知症の診断技術の開発に取り組んでいるのが、奈良先端科学技術大学院大学の荒牧英治特任准教授だ。認知症の判定には、一人の患者を長期間にわたって深く観察することや、正確な計器などさまざまな条件が必要になってくる。「情報技術は一定の確率で失敗が起こるため、それをカバーするために2つの解決方法がある」と語る荒牧特任准教授に、技術的な観点から産業応用に必要な条件を伺った。 自然言語処理技術を医療に応用 Q:研究の概要についてお聞かせください。 … [もっと読む...] about 自然言語処理の技術で、医療現場の課題を解決する〜荒牧英治・奈良先端科学技術大学院大学特任准教授
自然免疫の研究で、アレルギーを引き起こすメカニズムを解明する~茂呂 和世・理化学研究所チームリーダー
昨今、さまざまなアレルギーが報告されており、社会問題となっている。アレルギーは先進国特有の症状であることがわかっており、また明確なアレルゲンがわからないままアレルギー症状を発症させるケースも散見される。なぜアレルギーが起こるのかを考えるにおいて重要なキーとなるのが、人間が生来もっている自然免疫だ。免疫系は体内に侵入した異物の排除に重要な役割を持つ一方、アレルギーの発症にも関与するためだ。この自然免疫を解明することで、アレルギーの原因を追求することができる。こうしたなか、「ILC2」とよばれる自然リンパ球の発見によって、アレルゲンがない状態で起こるアレルギーのメカニズムを説明したのが、理化学研究所生命医科学研究センター自然免疫システム研究チームの茂呂和世チームリーダーだ。今回は茂呂チームリーダーに、これまでに説明がつかなかったアレルギー症状を解明する大き … [もっと読む...] about 自然免疫の研究で、アレルギーを引き起こすメカニズムを解明する~茂呂 和世・理化学研究所チームリーダー
グラフ理論と理論計算機科学を駆使し、アルゴリズムを高速化する~河原林 健一・国立情報学研究所教授
ビッグデータが世の中にあふれるなか、膨大なサイズのグラフについては、現行のアルゴリズムでは実用的な速度で情報を解析することが不可能である。こうして高速アルゴリズムの開発が求められるなか、課題を解決する高速アルゴリズムの開発やデータクリーニングによる計算量減少に取り組んでいるのが、国立情報学研究所の河原林 健一教授だ。モデル化、アルゴリズム、実装の全工程がわかる人材育成が急務だと語る河原林教授に、現状の問題意識について話を伺った。 グラフ理論と計算機科学の両面から、ビッグデータに向き合う Q: … [もっと読む...] about グラフ理論と理論計算機科学を駆使し、アルゴリズムを高速化する~河原林 健一・国立情報学研究所教授
パワーエレクトロニクスを研究し、人間の飽くなき探究心を実現する~伊東 淳一・長岡技術科学大学教授
近年、電気自動車を街で見かけることも多くなり、電力技術に注目が高まっている。いかに電気効率を上げるかというのは、電力を無駄なく使っていく上で必要不可欠であり、基礎的な技術研究とそれを実証化する産業化プロセスが不可欠である。パワーエレクトロニクスの専門家としてこの分野に長年携わるのが、長岡技術科学大学の伊東淳一教授だ。今回は社会一般におけるパワーエレクトロニクスの必要性から、電力技術がさらに発展を遂げるために必要な考え方について伺った。 現代生活に必須のパワーエレクトロニクスを全般的に研究 Q: まずは、パワーエレクトロニクスの研究概要、社会的なニーズについてお聞かせください。 電力を電子技術や制御技術を使って効率よく制御しようとはかるのが「パワーエレクトロニクス」です。「パワーエレクトロニクス」という言葉は1970 … [もっと読む...] about パワーエレクトロニクスを研究し、人間の飽くなき探究心を実現する~伊東 淳一・長岡技術科学大学教授
最先端の観察技術で、細胞の成長ゆらぎの謎を解明する~若本 祐一・東京大学大学院総合文化研究科准教授
細胞の基本的な性質として、「遺伝情報が同じで、置かれた環境が同じであっても、1 細胞レベルで観察される成長スピードは異なる」ことがわかっている。これは成長ゆらぎと呼ばれるが、遺伝情報として継承される性質とは別であり、これまではあまり注目されてこなかった。近年、マイクロ流体デバイスと呼ばれる装置を用いてこの成長ゆらぎに注目した結果、「細胞レベルの成長ゆらぎが大きいほど、構成される細胞集団がより速く成長できる」というのを明らかにしたのが、東京大学大学院総合文化研究科の若本 祐一准教授らである。今回は若本准教授に、成長ゆらぎの観察方法や、これまで注目されてこなかった部分に注目が集まるようになった技術的要因について伺った。 観察条件を一定に保つ技術を開発 Q: … [もっと読む...] about 最先端の観察技術で、細胞の成長ゆらぎの謎を解明する~若本 祐一・東京大学大学院総合文化研究科准教授
骨を中心とした制御システムを研究し、骨の真の役割を解明する~高柳 広・東京大学大学院医学系研究科免疫学教授
これまで人間の骨と免疫は別々の組織として研究が進められていたが、近年、関節リウマチをはじめとして、様々な病気で免疫の異常と骨の異常が関わりあっていることや、骨と免疫に共通して作用する分子が病気を媒介していることなどが明らかになりつつある。そこで提唱された「骨免疫学」の第一線で研究に取り組むのが、東京大学大学院医学系研究科免疫学の高柳 広教授だ。今回は骨免疫学の可能性から、「骨を中心とした制御システム」を見つけるための研究の概要についてお話を伺った。 常に代謝を繰り返す「骨」の特性を研究 Q: … [もっと読む...] about 骨を中心とした制御システムを研究し、骨の真の役割を解明する~高柳 広・東京大学大学院医学系研究科免疫学教授
膨大なデータから気候変動の法則を見つけだし、的確に予測する~小坂 優・東京大学先端科学技術研究センター准教授
世界のある地域で起こった気候現象が遠く離れた国の天候を左右することがある。それは異常気象の予測に利用できる可能性がある。たとえばエルニーニョ現象は、一度発生すると1 年ほど続き、世界中に異常気象をもたらす。日本も例外ではなく、エルニーニョ現象が起こると、冬は暖冬に、その次の夏は冷夏になりやすいといわれている。これらの相関関係が解明され、また予測することができれば、あらかじめ適切な対策が打てるようになる。こうした中、世界中の膨大な気象観測データを蓄積・解析し、法則化をめざしているのが、東京大学先端科学技術研究センターの小坂 優准教授だ。今回は気候変動の種類、気候変動におけるデータ分析の基本的な考え方、アジア地域特有の研究課題などについて伺った。 気候観測データを解析し、シミュレートする Q: … [もっと読む...] about 膨大なデータから気候変動の法則を見つけだし、的確に予測する~小坂 優・東京大学先端科学技術研究センター准教授
レム睡眠を独自の技術でコントロールし、睡眠の機能を解明する~林 悠・筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 准教授
人間の睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠に大きく分けられ、一晩の間でその2種類が何度も切り替わっている。ノンレム睡眠についてはある程度解明が進んでいるのに対し、レム睡眠についてはほとんど何もわかっていないのが現状である。「レム睡眠は何のためにあるのか」を解明すべく、独自の研究手法を確立しているのが、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の林 悠准教授だ。林実験室は、脳の中にあるレム睡眠とノンレム睡眠を切り替えている脳部位を見つけ出し、そこを遺伝子操作の技術を使って操作する方法を採ることで、レム睡眠固有の機能解明をめざしている。今回は睡眠研究の大枠と、遺伝子操作を使ったレム睡眠研究の技術、社会課題への応用の可能性について伺った。 レム睡眠から、睡眠を解明する Q:研究の概要をお聞かせください。 睡眠研究のアプローチは、大きく3つに分けられます。1つ目が、睡 … [もっと読む...] about レム睡眠を独自の技術でコントロールし、睡眠の機能を解明する~林 悠・筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 准教授