人間の脳を知るためには、脳を構成している細胞を研究することが必要である。しかしながら、脳全体の細胞の数は膨大なものになり、全体を一度に研究することは現実的に難しい。そこで必要になるのが、人間よりも細胞の数がすくない実験動物の観察である。今回取材に伺った東京大学理学系研究科 … [もっと読む...] about 線虫の行動ルールの解明から、脳の仕組みを解き明かす〜飯野雄一・東京大学大学院理学系研究科教授
あらたな触媒の発見により、エネルギー問題の非効率を解決する〜阿部英樹・物質・材料研究機構主任研究員
エネルギー問題への関心が年々高まるなか、限られた天然資源を有効利用する技術が求められている。そんななか、「触媒」をキーワードに、水や二酸化炭素、あるいはメタンなど、豊富で環境負荷の低い「非在来型天然資源」を利活用するための材料・技術の開発に取り組んでいるのが、物質・材料研究機構の阿部英樹・主任研究員だ。「全く新しい触媒の組み合わせは、意図的な偶然によって発見される」と語る阿部氏に、触媒の基本的な役割、独自の研究手法について伺った。 効率的なエネルギー運搬のために必要な「触媒」を研究 Q:まずは、研究の概要についてお聞かせください。 「触媒」について研究をしています。触媒というものを広い意味でまとめると、「分子エネルギー変換材料」といえます。分子をいじる、分子の結合を組み換えたり、切ったり貼ったりを、その不必要な外部からのエネルギーの供与を経ずに、最も … [もっと読む...] about あらたな触媒の発見により、エネルギー問題の非効率を解決する〜阿部英樹・物質・材料研究機構主任研究員
化学の視点から、ヒトと動物の嗅覚研究に切り込む 〜東原和成・東京大学大学院教授
「嗅覚」は人間にとっても動物にとっても必要不可欠なものであるが、嗅覚を理解するためには、匂いやフェロモンがどのように感知され、それがどのように脳に伝わり、最終的なアウトプットである行動や生理的な変化、情動の変化が起こるかといった一連の流れをすべて解明する必要がある。従来の研究では、神経生理学や分子生物学など、特定の分野に限った研究が主流であったため全貌の解明が難しいといわれていた。こうしたなか、匂いやフェロモンを情報物質=化学シグナルととらえ、有機化学の視点から新たなアプローチを実現しているのが、東京大学大学院 農学生命科学研究科の東原教授だ。今回は嗅覚研究のアプローチ手法と、人間社会と香りとの向き合い方について伺った。 化学シグナルの受容という観点から、嗅覚を研究 Q:研究の概要からお聞かせください。 五感のひとつ、嗅覚を研究しています。嗅覚はもと … [もっと読む...] about 化学の視点から、ヒトと動物の嗅覚研究に切り込む 〜東原和成・東京大学大学院教授
トランスポーターを標的とした創薬研究で、小児難病を克服する〜林久允・東京大学大学院助教
生後間もない小児の肝臓疾患のなかには、治療に肝移植が必要となる難病がある。しかしながら肝移植には、提供元の肝臓数が足りないという問題がつきまとう。そこで一つの解決策となるのが、薬によって小児肝臓疾患を治療することだ。そんななか、トランスポーターの機能が低下することで病気が起こるというメカニズムから、トランスポーターの機能を改善するべく新規薬物療法の開発を指向した創薬研究をすすめているのが、東京大学大学院薬学系研究科 … [もっと読む...] about トランスポーターを標的とした創薬研究で、小児難病を克服する〜林久允・東京大学大学院助教
ネズミ形ロボットの研究で、人間とロボットの未来像を描く〜石井裕之・早稲田大学創造理工学部 准教授
「ロボットのいる暮らし」が年々現実味を帯びており、家庭でロボットとコミュニケーションをとりながら生活していくことが技術的に可能になりつつある。家庭用ロボットに社会的に理解が高まる中、人間を支援するロボットの開発に取り組んでいるのが、早稲田大学総合機械工学科創造理工学部の石井裕之准教授だ。学習心理学を応用し、ネズミと小型ロボットとの関係を観察する実証実験を重視しながら、単に共に過ごすだけではなく生物に行動の変容を促す機械システムの開発に取り組む石井准教授に、ロボットのある未来の実現に向けたビジョンを伺った。 行動心理学の知見をベースに、ロボットの行動を設計 Q:まずは、研究の概要についてお聞かせください。 もともと、ネズミを使った心の研究は動物心理学の中ですごく昔から行なわれているものです。大体20世紀の初頭くらいからネズミを使った研究は行なわれて … [もっと読む...] about ネズミ形ロボットの研究で、人間とロボットの未来像を描く〜石井裕之・早稲田大学創造理工学部 准教授
ショウジョウバエの神経研究で、聴覚の仕組みを解き明かす〜上川内あづさ名古屋大学 大学院理学研究科 教授
生物の「聴覚」はさまざまな音から適切な情報を取り出し瞬時に判断する高度なシステムであるが、その聴覚の仕組みを解き明かすためにはどんな研究が有効であろうか。その一つの研究アプローチとして、ショウジョウバエの聴覚系が哺乳類の聴覚系と類似することに着目し、人間の聴覚システムの理解につなげる試みを進めているのが、大学院理学研究科の上川内あづさ教授だ。研究の対象としてショウジョウバエを選んだ経緯とその理由、研究の先にある人間の聴覚システムの理解へのゴールマップについて、上川内教授に話を伺った。 音を使ったコミュニケーションの基本を研究する Q:まずは、研究の概要についてお話しください。 まず、私たちは必ずしも人間を理解したいと思って研究をしているわけではなく、自然界の仕組みを理解したいという観点から研究をしています。 ですからショウジョウバエを理解したいわ … [もっと読む...] about ショウジョウバエの神経研究で、聴覚の仕組みを解き明かす〜上川内あづさ名古屋大学 大学院理学研究科 教授
マウスの透明化技術で、生命システムの時間の解明に取り組む〜上田 泰己・ 東京大学教授
生物の体の組織は細胞で構成されているが、その細胞ひとつひとつを観察することができれば、治療や研究に大きな成果をもたらすことができる。組織を構成する細胞の観察のために有効なのが、透明化だ。これまで組織の透明化の技術はさまざまな研究者が挑戦してきたが、2014年にCUBICという方法でマウスの全身透明化を実現させたのが、東京大学 医学系研究科 機能生物学専攻システム 薬理学教室の上田 … [もっと読む...] about マウスの透明化技術で、生命システムの時間の解明に取り組む〜上田 泰己・ 東京大学教授
柔らかい有機デバイスをバイオ医療に応用し、新たな社会価値を創造する〜染谷隆夫・東京大学大学院教授
「曲がるディスプレイ」という言葉が一般的になるなど、有機デバイスのあらたな開発が注目されている。そんななか、シート状のフィルムの上に大面積で簡単に製造ができる「柔らかい」デバイスを開発し、有機デバイスの医療・バイオ分野への応用を積極的に推し進めているのが、東京大学大学院 工学系研究科 電気系工学専攻の染谷 … [もっと読む...] about 柔らかい有機デバイスをバイオ医療に応用し、新たな社会価値を創造する〜染谷隆夫・東京大学大学院教授
渋滞学の観点から、スムーズな社会の動きを生み出す〜西成活裕・東京大学教授
車の渋滞を解決する「渋滞学」という学問が注目されている。様々な場所に現れる「渋滞」現象のメカニズムを物理学的な視点から研究しているのが、東京大学先端科学技術研究センターの西成 活裕 … [もっと読む...] about 渋滞学の観点から、スムーズな社会の動きを生み出す〜西成活裕・東京大学教授
ゲートエレクトロニクスの研究で最大効率を実現する〜桜井 貴康・東京大学国際・産学共同研究センター教授
近年、世の中のさまざまな機械や電力システムを制御するために、半導体を使って非常に高い電圧や大きな電流をコントロールすることが一般的になりつつある。そこで必要になるのが、従来では弱電といわれていた分野とパワーエレクトロニクス(強電)といわれていた分野の融合である。その境界となる「ゲートエレクトロニクス」の分野を中心となって研究しているのが、東京大学 国際・産学共同研究センターの桜井 … [もっと読む...] about ゲートエレクトロニクスの研究で最大効率を実現する〜桜井 貴康・東京大学国際・産学共同研究センター教授